非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は生活習慣病の一つとして近年注目される疾患であり、肥満や糖尿病・脂質異常症を背景に発症する。分子状水素は抗酸化剤としての作用に加えて抗炎症効果を示すことが明らかにされている。NASHモデルマウスにおいて肝臓癌の進展を水素により抑制可能であるか、また抑制可能な場合その分子機序について検証した。水素はNASH発症に至るsecond hitの炎症、酸化ストレスを制御するとともに、ヒストンメチル化修飾というエピジェネティックな機構に影響を与えて遺伝子発現を修飾し、同時にmtUPRを誘導することによりミトコンドリアを保護することで発癌に至る病態を軽減すると推察された。
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