研究実績の概要 |
胃癌217症例に関してTP53, PTEN, KRAS, PIK3CA,の遺伝子変異およびメチル化を検索し分子生物学的特徴と臨床病理学的背景因子との関連を検討した。p53遺伝子Central core領域のhot spot (R175, G245, R248, R249,R273, R282) に変異を認める群は生存期間、無再発期間とも有意に短く (p=0.001)、肝転移再発 (p<0.05)、他臓器再発 (p=0.02)に関わる予後不良因子であった。遺伝子メチル化に関して、H. pylori非感染、感染胃粘膜それぞれ6例、胃癌組織、背景粘膜それぞれ8例、4例の計24サンプル関して48遺伝子、50箇所のプロモーター領域のメチル化を検索し、胃癌組織で特異的にメチル化されている遺伝子プロモーター13箇所 (MINT1, 2, 12, 25 and 31, RORA, GDNF, ADAM23, MLF1, PRDM5, RASSF1A, ATP2B4, MLH1) に関して胃癌217症例での検討を行った。H. pylori非感染、感染胃粘膜それぞれ2例、6例に関しIllumina Infinium Human Methylation 450 アレイを用い前癌状態における遺伝子メチル化を網羅的に解析した。腫瘍特異的メチル化が蓄積する癌特異的な遺伝子メチル化の過剰蓄積を示すCpG アイランドメチル化形質(CIMP: CpG island methylator phenotype)は36例16.6%に認め、既報と同様EBウイルス関連胃癌との関連を認めた(p=0.0001)。胃炎粘膜における遺伝子メチル化の網羅的解析では組織学的胃炎スコアが高い群で特にCpG islandの高メチル化が蓄積されており、組織学的胃炎の程度や拡大内視鏡像による胃粘膜形態と有意な関連を認めた。 HP陽性胃粘膜で高度メチル化を呈する9遺伝子 (Igf2, Myod1, SLC6A12, MIR124A1, GDNF, CDH1, PRDM5, MLF1, RORA)に関して106例、94例の異なるコホートからなる胃炎サンプルのメチル化解析を行った。高度メチル化に関連する因子を統計学的に検討したところ、組織学的胃炎の程度、テロメア短縮、拡大内視鏡像による胃粘膜形態が高度メチル化に有意に関連していた。
|