研究実績の概要 |
胃癌217症例に関してTP53, PTEN, KRAS, PIK3CA,の遺伝子変異を検索した。 CpG island メチル化形質 (CIMP) に関してMINT1,2,12,25,31及びMLH1 のメチル化をパイロシークエンスにて検討した。これらの分子以上の組み合わせと臨床病理学的因子につき検討を行った。CIMPの状態とp53遺伝子のCentral core領域hot spot 変異(R175, G245, R248, R249,R273, R282)の有無による分子サブタイプが最も予後と関連しており、全症例は1) CIMP+TP53 hot spot変異なし(n=120)、2) CIMP-TP53 hot spot変異なし(n=81)、3) CIMP+TP53 hot spot変異あり(n=8)、4) CIMP-TP53 hot spot変異あり(n=5)の4群に分類された。分子サブタイプ4),3),2),1)の順に生存期間、無再発期間とも有意に短く (ともにP <0.0001)、診断時の病期は進んでおり(P=0.003)、静脈侵襲(P =0.01)、リンパ節転移 (P =0.02)、腹膜播種 (P=0.001) の頻度が高くなった。多変量解析では分子サブタイプが独立した予後因子として抽出された。(ハザード比=1.66, 95%信頼区間= 1.07-2.57, P=0.006)。一方、p53遺伝子のhot spot以外の変異、KRAS遺伝子変異、CIMP症例でのEBウイルス陽性、MLH1 のメチル化は予後との関連を認めなかった。よってCIMPの状態とp53遺伝子hot spot 変異の組み合わせによる分子サブタイプは胃癌の予後不良に関連しており、胃癌患者の予後予測に寄与すると考えられた。
発癌早期の遺伝子メチル化を検索する目的で、HP陽性胃粘膜で高度メチル化を呈する9遺伝子 (Igf2, Myod1, SLC6A12, MIR124A1, GDNF, CDH1, PRDM5, MLF1, RORA)に関してH. pylori除菌歴のない106例、94例の異なるコホートからなる胃炎サンプルのメチル化解析を行った。高度メチル化に関連する因子を統計学的に検討したところ、組織学的胃炎の程度、テロメア短縮、拡大内視鏡像による胃粘膜形態が高度メチル化に有意に関連していた。現在除菌後の症例に関して解析を進めている。
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