マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析データにもとづいたバイオインフォマティクス解析を行うことにより、生後発達期(生後2週齢から4週齢の間)に生じるShn2 欠損マウスの海馬歯状回顆粒細胞の脱成熟にコアに関わると考えられる候補分子を選定した。これらの候補分子には、細胞内小器官の形態形成に関わることが知られている分子や、細胞内分子シグナル伝達経路に関わる分子が含まれていることがわかった。 そこで、まず、これらの分子の発現異常が、Shn2 欠損マウスの生後発達期に特異的な現象なのかどうか調べるため、成体のShn2 欠損マウスの海馬歯状回におけるこれらの分子の発現パターンを調べた。その結果、これらの分子に関して、4ヶ月齢以降のShn2 欠損マウスの海馬歯状回においても、生後発達期と同様な発現異常が見られた。つまり、生後発達期に生じる海馬歯状回顆粒細胞の脱成熟にコアに関わっていると考えられる分子の発現異常が、成体になっても続いていることが明らかとなった。これらの分子は、成体において、海馬歯状回顆粒細胞の脱成熟の正常化の際のターゲットとなる可能性が考えられた。 これまでに得られた結果をうけて、成体Shn2 欠損マウスにおいて薬理学的介入により脱成熟した海馬歯状回顆粒細胞の正常化法確立のための検討を開始した。in vivoで両側の海馬に特異的にかつ長期間の薬剤投与を行うため、ダブルラインカニューラと浸透圧ポンプを組み合わせて行う。候補分子あるいはその分子の関わる分子パスウェイを制御する薬剤の投与を、Shn2 欠損マウスが確保でき次第行い、海馬歯状回顆粒細胞の脱成熟が正常化できるか調べる。
|