研究課題/領域番号 |
26870689
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
三輪 まどか 南山大学, 総合政策学部, 准教授 (30516084)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 成年後見人 / 専門職 / 家族・親族の対立 |
研究実績の概要 |
本年度は、後見業務に関わる専門職に対するアンケート調査を実施した。調査を行うにあたっては、その調査項目について、専門職(弁護士、司法書士、社会福祉士、精神保健福祉士)を交えた検討会を3度行い、精査した結果を反映した。調査は、検討会に参加したメンバーのご協力を得て実施され、「高齢者とその家族・親族をめぐる対立と専門職の『かかわり』ー専門職に対するアンケート調査結果ー」と題し、アカデミア社会科学編11号(平成28年6月発行)に掲載予定であり、調査結果のリーフレットの配布を予定している。 結果の概要は、以下の5点が挙げられる。第1に、本人・家族等、あるいは家族等間で対立が生じやすい事柄として、使い込みの回収・調査、それがより悪質になった横領が最も多いということ、第2に、その対立の原因と考えられることは、本人・家族等の特性、財産の有無、親密さ・疎遠さ、制度・法律の熟知・無知のうち偏りが出ず、それぞれ同様の比率となったこと、第3に、対立が解消・緩和した要因のうち、専門職のかかわりという点からみてみると、ソフトな順から、説明<交渉<裁判所の介入<法的対応となるが、ソフトな対応は社会福祉士による対応が多く、ハードな対応は、弁護士による対応となっていること、第4に、専門職が最も困難だと感じることは、多い順に、説明・理解の困難さ、対立そのものや本人の意思の尊重、家族の信頼や協力を得ること、立ち位置といったものであること、がわかった。第5に、専門職間に最も有意な差がでたものとして、同職種・他職種との連携という点が挙げられた。社会福祉士は積極的に同職種・行政・裁判所に連携・助言・支援を求めるのに対し、他の職種はそうした行動はみられなかった。 以上のように、専門職間での対処の方法の違い、後見人としての困難を浮き彫りにした点で、本研究の意義があったものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に予定していたアンケート調査を順調に実施することができ、また、その成果についても、年度をまたいでしまったものの、公表が予定されている。したがって、おおむね順調に進展しているものと考える。 また、今回の調査において、2つの課題が浮き彫りになった。1つは、専門職を対象としたアンケート調査であったため、当事者である、家族等の立場に立っていない、つまり、自分にとって第三者の眼が必ずしも正確とは限らないという点である。もう1つは、本アンケート調査で、専門職にとっても重要な助言機関として挙げられたのは、家庭裁判所であった。成年後見制度を監督する立場としても重要であり、家庭裁判所の役割についての考察も課題として残っている。この2つを明確にすることができたという点でも、今後の研究の方向性を決める重要な内容であったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、本アンケート調査において、2つの課題が明確になった。1つは当事者の声の不足であり、もう1つは家庭裁判所の役割の考察である。この2点について、本研究費の申請段階では想定しておらず、別の研究費や翌々年度以降の科研費の申請において、解決する必要がある。 平成28年度は、当初予定していた介護施設・事業所に対する大規模なサンプリング調査を予定しており、上記2点のうち、1つでも解決できるよう、研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は産休の取得により、実質的に研究ができなかったため、1年間研究期間を延長し、平成27年度に実施予定の調査はそのまま実施し、平成26年度に実施を予定していた調査は、平成28年度に実施することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に実施を予定していた、介護施設・事業所に対する契約書のサンプリング調査を、平成28年度に実施する。そのため、調査に用いるアンケート調査票の印刷および送信・返信用封筒の印刷および郵送料がかかる。また、サンプリング調査は2,000件超を予定しているため、回収率が10%であったとしても200通のデータ整理が必要となり、データ整理用のPCおよび、アルバイトの雇用が必要である。 加えて、平成27年度に実施したアンケート調査により、いくつかの課題が浮き彫りになった。そのフォローアップ調査のため、調査を実施した大分への旅費を計上した。
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