研究実績の概要 |
平成28年度は、東京都内にある介護施設および事業所を対象に、介護保険サービスを提供する場合の、契約書・契約書別紙・重要事項説明書(いわゆる3点セット)のサンプリング調査と契約締結過程におけるアンケート調査(以下2016年調査とする)を実施した。 アンケート調査においては、2003年に実施した同様のアンケート調査(ただし、2003年のアンケートは訪問介護事業所のみを対象とし、1,801事業所のうち、757箇所の回答が寄せられた)との比較を行った。措置から契約への理念のもと、介護保険制度内に契約が取り入れられてすぐの時点(2003年)と、それから法改正をしてずいぶん定着した感のある現在(2016年)において、介護契約に関して相違があった点は、以下の2点である。 第1に、契約内容説明の対象者の選定である。2003年調査に比べて2016年調査の方が、家族に対してよりも、利用者本人に対して説明しようとする事業者が増えていることが明らかとなった。この点、本人の意思尊重、無権代理の危険性を考える事業者が増えたものと推測できよう。 第2に、契約締結後のトラブルであり、2016年調査では2003年調査と同様「介護保険対象のサービスの範囲」についてのトラブルが多かったものの、そのほかの項目で4割を超えるものはなく、トラブルを回避する努力をしているものと推測される。 これら2点を踏まえ、依然として介護保険内・外のサービスを説明するためのパンフレットの作成やわかりやすい介護サービス利用契約書の提示が求められていることが明らかとなった。契約書の分析および比較については、現在進めているところであり、来年度刊行する予定の著書に反映予定である。
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