研究課題/領域番号 |
26870692
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
飯岡 英和 愛知医科大学, 医学部, 助教 (20425416)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞極性 / 腫瘍形成 |
研究実績の概要 |
既知の上皮細胞極性制御因子のうち唯一の細胞貫通タンパク質であるCrumbs(Crb)は、上皮細胞の頂部膜のみに局在し、タンパク質複合体を形成することで、正常な上皮組織の構築に必須の役割を果たす。哺乳類におけるCrb 相同遺伝子の一つであるCrb3 は全身の上皮組織に発現し、腫瘍形成に対して抑制的に機能することが知られている。しかし、ヒトの癌の亢進・抑制との関連性は明らかではなかった。本研究ではCrb3のヒトの腫瘍におけるCrb3の役割を解析することで、新規の抗腫瘍メカニズムを明らかにすることを目的としている。今年度はまず計画通り組織アレイを用い、Crb3の免疫染色を行った。その結果、例外はあるものの傾向として腺癌系腫瘍組織に高い発現を認めることが判明した。次に腺癌の中で特に乳癌、大腸癌、前立腺癌に注目し、分化度との関連を調べた。その結果、高分化型腫瘍組織において正常組織と同様に管腔形成に機能を果たしている可能性が考えられた。そこで、Crb3の機能を明らかにするため、既存の腺癌系培養細胞株の中から管腔形成能を有するものを選定し、CRISPR/CAS9システムによりCrb3ノックアウト細胞株を樹立した。この細胞株を用いてアッセイを行ったところ、予想に反し、細胞の移動性、浸潤性、腫瘍形成能のいずれもコントロール細胞と比較し大きく抑制されていることが分かった。これらのデータはこれまでの知見と逆のことを示しており、本研究を進めることでCrb3を含む細胞極性制御因子の機能に関する一般的な認識を覆すと同時に、腫瘍の浸潤・転移の新たなメカニズムの解明につながる可能性がある。平成27年度はノックアウト細胞を用いて、さらに詳細なメカニズムの解明を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初期に行った解析の幾つかで既知の知見と全く逆の結果が得られたため、慎重な解析が必要と考え、計画を変更しノックアウト細胞の作製を行った。ノックアウト細胞の作製でかなりの時間を消費したが、樹立した細胞を用いコンスタントに結果が得られるため消費した時間に見合った結果が得られていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
樹立したノックアウト細胞を活用し、生化学、分子生物学的な解析により新たな腫瘍形成メカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験結果が既知の知見に基づいた仮説と大幅に異なり、実験計画の変更を余儀なくされたことに加え、平成27年度から新潟大学へ異動するための準備等もあり、予定通りの支出が出来なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
Crb3が腫瘍形成を促進するという新しい仮説を検証するため、新たに計画した実験の経費に順次支出する予定である。具体的にはメカニズムに着目した生化学的解析に重点を置き、試薬購入や機器分析の受託解析などに支出することを考えている。
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