今年度の研究課題は、「球速を落とさずに素早くクイックモーションを行うことを目指した指導法」の確立であった。そのため、膝の抜き動作とともに膝の位置や股関節の動きなどを交えた詳細なトレーニング方法を考案し、投手に指導を行って、その前後のクイックモーションについて時間と動作を比較・検討することとした。 6名の投手に対して、30日間指導とトレーニングを行った。その前後の動作を、3台の高速度カメラで撮影し、3次元動作分析を行った。その結果、指導前の球速が121.5±4.6km/h、指導後が119.26±4.7km/hで、有意傾向(p=0.056)が見られた。このため、本研究における指導内容でも球速の低下を防ぐことはできなかった。これについては、今後も引き続き検討していく必要があろう。 クイックモーションの時間(足が地面を離れてからリリースまで)は指導後の方が有意に短縮した(指導前:1.141±0.126sec、指導後:0.994±0.131sec、p<0.05)。また、足が地面を離れた時点(FTO)から膝が最も高く上がる時点(MKH)までの第一局面において指導後の方が有意に短縮し(指導前:0.405±0.112sec、指導後:0.269±0.113sec、p<0.05)、MKHから足が地面に接地する時点(FP)までの第二局面では有意に短縮する傾向を示した(指導前:0.509±0.033sec、指導後:0.496±0.040sec、p<0.1)。それ以降の局面では有意差はみられなかった。以上のことから、膝の抜きにより足の上げ下ろし、つまりステップ動作の時間が短縮することで、クイックモーションの時間が短縮されることが示された。 今後、本研究の結果をISBSで発表するとともに、桑田氏へのインタビューを元にした論文を野球科学研究に投稿予定である。
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