本研究の目的は、慢性期心疾患患者における血中マイオカインやアディポカインに対する運動療法継続(身体活動量)の影響およびそれらの変化と生理的機能との関連を明らかにすることである。 本年度は、前年度測定に参加した19名のうち、14名(平均年齢77.6歳)が再測定に参加した。対象者を運動教室の継続的参加群(運動教室継続群)と不参加群(運動教室非継続群)に分類し、マイオカイン、アディポカイン、心臓・血管機能、および冠動脈危険因子に関する項目の2年間の変化を比較した。また、この2年間で得られたデータをもとに、日常の強度別身体活動時間とマイオカイン、アディポカイン、心臓・血管機能、および冠動脈危険因子との関連を横断的に検討した。 マイオカイン、アディポカイン、心臓・血管機能、および冠動脈危険因子の項目の2年間の変化は、運動教室継続群と運動教室非継続群で有意差は認められなかった。また、日常の強度別身体活動時間とマイオカイン、アディポカインとの関連は認められなかった。一方、中高強度活動時間は、脳性ナトリウムペプチド(BNP)と有意な負の相関、高密度リポタンパク質コレステロール(HDLC)と正の相関が認められた。また、BNPは中高強度活動時間の少ない者よりも中高強度活動時間の多い者で有意に低値を、HDLCは中高強度活動時間の少ない者よりも中高強度活動時間の多い者で有意に高値を示した。 2年間の運動教室継続が慢性期心疾患患者のマイオカイン、アディポカイン、心臓・血管機能、および冠動脈危険因子に及ぼす影響は小さかった。また、日常の身体活動量とマイオカインおよびアディポカインとの関連も認められなかった。しかしながら、慢性期心疾患患者の日常の身体活動量が心臓・血管機能や冠動脈危険因子の改善に関連することが示唆された。
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