研究実績の概要 |
非常に高いCO親和性を有する超分子錯体hemoCDを用いて、生体内におけるCOの生理機能につき模索した。まずhemoCDを動物の血中に投与し、その際に肝臓内で起こる遺伝子発現状況についてRT-PCR法などにより検討した結果、hemoCDによって血管内のCOが欠乏すると、COを産生する酵素であるヘムオキシゲナーゼ1の発現が有意に誘導されることが明らかとなった。さらにその誘導機構には血中のCO-Hb濃度の一時的な低下が関与することを明らかにしており、本成果は2015年度中に公表する予定である。 つぎにhemoCDを細胞内に導入し、細胞内COの選択的除去によるCOのシグナル分子としての機能探索を行った。hemoCD自体には細胞膜透過能がないために、hemoCDの分子骨格に膜透過性ペプチドを導入した。hemoCDはポルフィリン(Por)とシクロデキストリン(CD)の2成分から構成される超分子であり、Por側(Chem. Lett. 43, 2014, 1095)およびCD側(Chem. Commun. 2015, 51, 2421)のそれぞれにオリゴアルギニンを取り付けた系を構築した。それぞれの系において、超分子錯体のHeLa細胞内への取り込みが確認された。また細胞内へのhemoCD誘導体の導入によって、炎症系因子であるTNF-αの発現が誘導されることが明らかとなり、COが抗炎症作用を示すといった従来の知見をノックダウンの方面から支持する結果が得られた。
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