研究課題/領域番号 |
26870707
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研究機関 | 花園大学 |
研究代表者 |
秦 美香子 花園大学, 文学部, 准教授 (90585358)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フィンランド / 国際情報交換 / マンガ / 出版 |
研究実績の概要 |
グローバル化する日本の文化産業の実相を明らかにするのが本研究の目的である。分析の焦点は、日本のマンガ文化と、それを受容する国のコミック文化との相互作用に置く。調査の対象とする事例は、日本のマンガのファン文化が近年発達し、また現地のコミック文化も100 年ほどの蓄積がありながら、これらを対象にした学術研究がいまだほとんど行われていないフィンランドである。 2014年度は、マンガ出版全体の生産と流通に焦点を置いた。 まずは、日本マンガの翻訳出版・流通状況の調査を行った。出版社の編集者やマンガファンへの聞き取り調査は2013年度から個人研究として実施していたため、そのデータをふまえ、8月25日~9月2日に現地調査を行った。調査目的は、2013年度調査時点から出版状況がどのように変化したかを明らかにすることであった。調査の結果、日本マンガの出版は継続的に行われているが、北欧地域の作家による作品がより重視されるようになってきたことが分かった。これは、近年フィンランドのコミックアーティストはフランスやドイツなどコミック文化が発展しているヨーロッパ各国で評価が高まっているという現状を受けてのことであると考えられる。 また、現地調査では、フィンランドにおける日本マンガや日本文化全体の受容について、および、フィンランドのコミック文化についての先行研究を調査した。こうした先行研究は電子化(インターネット上でのオンライン公開)されていない。調査の結果、日本におけるフィンランド人気やムーミン人気について書かれた研究などを収集した。 これら調査に加えて、Turku UniversityのRalf Kauranen 氏、Helsinki UniversityのEija Niskanen氏、Tampere Universityの布施倫英氏を訪問し、研究協力を依頼するために研究計画を説明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外に住む研究協力者との間で、現地調査の前に書類を提出してもらったりすることが出来なかったため、予定していた調査(コミックアーティストや出版業界関係者へのインタビュー調査)を行うことが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度の計画のうち達成できなかった、Finnish Comics Societyに関わるコミックアーティストや運営スタッフを対象とした調査を実施する。 2015年度調査として計画していたインターネットを利用した受容調査については、変更なく実施する。質問項目は、フィンランドの地元アーティストによるコミック、日本のマンガ、他の地域(フランス、アメリカなど)のコミックそれぞれの読書量、読書の方法(図書館、自宅、カフェなど)、ファン活動(オンラインで掲示板に書き込む、コンベンションに参加するなど)への参加の度合い、それぞれに対する親近感や愛着の度合い、などである。アンケート調査を通して、どの地域のコミックに対する共感が最も高いのか、どういった読書行動をとっているのか、などを明らかにする。 申請時の計画では、2015年度には受容調査としてフィンランド最大のファンコンベンションであるFinnconで聞き取りなどを行う予定であった。しかし当該イベントが2015年度は開催中止となったため、この調査は実行不可能である。 なお、2014年度の研究成果は6月27~28日に開催される日本マンガ学会にて発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度に予定していた研究協力者に協力を頼んでの現地インタビュー調査が実施できなかったため、研究協力者の人件費やインタビュー協力者への謝金が未使用となった。 またインタビュー調査が実施できなかったため、2014年度内に調査結果を研究発表することができず、国内旅費が未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度中にインタビュー調査を実施する。
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