本研究の目的は,海外で日本のマンガが受容される様相を,一枚岩的なものとして見るのではなく現地の文化状況との関連に注意しつつ考察することであった.本研究ではとくにフィンランドを対象とし,観察調査およびインタビュー調査を実施し結果を分析した. 分析の結果,フィンランドのマンガ・アニメファンたちは,「クール・ジャパン」政策のイメージする「海外の消費者」像からは遠い様子が見て取れた.本稿が取り上げた事例からは,「日本のマンガ」というナショナルなものが日本の文化産業の資源として国際的競争力を持つというよりも,「マンガ」がナショナルな出自を忘れられて各地に溶け込んでいく様相が見てとれた.
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