研究課題/領域番号 |
26870708
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
平塚 順良 立命館大学, 経営学部, 非常勤講師 (40632807)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 梁啓超 / 福田英子 / 薛錦琴 / 日本維新列家慷慨詩 / 東アジア漢文学 / 清議報 / 明治維新 / ベトナム |
研究実績の概要 |
本年度は、ベトナムにおいて実施した漢文文献調査の成果を論文にまとめ、「ベトナム漢喃研究院図書館所蔵の『日本維新列家慷慨詩』および福田英子「致薛錦琴書」について」(『立命館文学』648号、2016年8月)を公表した。 日本の明治維新期に活躍した人物の漢詩や、日本の婦人運動の先駆者として知られる福田英子の書簡が、なぜベトナムに所蔵されているのか、その具体的な伝播の経路などを明らかにした。その経路と言うのは、日本から一度中国を経由してベトナムに至るというものであった。漢文は東アジアにおいて、かつて共通語としての役割を有しており、東アジア域内において国境を越えて伝播しうる可能性を有していた。そして今回の論文で紹介したように、日本で書かれた漢詩文が、中国・ベトナムで受容される事例も実際に存在した。 本研究の本来の目的は、ベトナムに所蔵されている漢文文献を利用して、中国の古典歌謡文学を研究しようというものであった。しかしその枠組みを越えて、日本・中国・ベトナムの三ヶ国間における漢文交流を論じるに至った。研究目的からの逸脱と言えば逸脱であるが、本研究が次の段階として、より大きなテーマである東アジア漢文学へと発展してゆく可能性を示すことができたのではないかと考える。 また2016年5月28日に、ミニシンポジウム「東アジア漢籍の沃野-その多様性を考える―」が、東京大学附属図書館アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門の主催でおこなわれ、中国・朝鮮・ベトナム・日本で、漢籍がそれぞれどのように規定されているのかなどが話し合われた。このミニシンポジウムに、ベトナム担当として参加し、発表・討論をおこなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベトナムの漢文文献を利用して、すでに論文を二本公表し、研究発表を二回おこなった。論文とは、「越南漢喃研究院図書館所蔵『楽府探珠』と阮綿審『鼓枻詞』について」(『風絮』11号、2014年12月)と「ベトナム漢喃研究院図書館所蔵の『日本維新列家慷慨詩』および福田英子「致薛錦琴書」について」(『立命館文学』648号、2016年8月)である。研究発表とは、「妙善故事の変遷と景興三十三年重刊本『香山宝巻』について」(中国古典小説研究会・2016年2月20日)と、「東アジア漢籍の沃野-その多様性を考える―」(東京大学附属図書館アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門・2016年5月28日)である。以上のことから研究は順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
すでに十分に研究発表・論文公表をおこなったので、本研究計画の最終年に当たる2017年度は、ベトナムの漢文文献を精読することにしたい。具体的には、ベトナムの最も重要な正史である『大越史記全書』の訳注を作成する。時間を要する作業なので、今年度中に成果を発表できるか分からないが、すでにこれまでの研究発表の蓄積があるので、問題はないと思われる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2016年2月4日に出産があり、育児などでその後の予算執行に遅延が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
2016年度に購入を予定していた書籍を、2017年度に購入する計画である。
|