研究課題/領域番号 |
26870709
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
石上 阿希 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (20516819)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 出版史 / 近世文学 / 意匠 / データベース / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
本研究は、江戸中期に京都を拠点として活躍した浮世絵師である西川祐信(1671~1750)に着目し、18世紀上方出版文化から江戸の都市文化へと続く知の連環を明らかにすることを目的としている。具体的には、(1)祐信全作品目録の作成(2)未翻刻資料の調査・翻刻(3)多分野の研究者による共同研究会。上記の研究を踏まえ、祐信を核とした文化の展開と交流の実態解明を計画している。 (1)祐信全作品目録の作成。平成26年度は、作品目録作成のためアメリカ・メトロポリタン美術館、コロンビア大学、NY公共図書館、ホノルル美術館での絵本調査を行った。この調査により40点の書誌情報を収集することができた。これまでの調査によって214点の絵本の情報が蓄積されており、これを基に次年度以降データベースの構築作業へと進む。 (2)未翻刻資料の調査・翻刻(3)多分野の研究者による共同研究会。報告者は平成23~24年にかけて西川祐信に関する共同研究を行った(科研費若手研究[B])。そこでは、文学史、美術史、服飾史から研究を行ってきたが、特に着物と文学という関連性は新しい視点となった。本研究では、この点に着目し、祐信が制作した着物の雛形本(模様の見本帳)が、文学作品から受けた影響を指摘し、服飾と文学、出版文化と風俗の関係性を明らかにする。報告者と染織研究者の加茂瑞穂氏(立命館大学)を中心として「西川祐信雛形本研究会」を立ち上げ、祐信の雛形本『正徳雛形』に記載された各雛形を分析し、模様の典拠となった文学、演劇との関連性を考察している。研究会は月1回の開催で、約8名のメンバーで研究発表を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
祐信の絵本調査は継続的に進めることが出来ており、当初の予定通り目録作成に向けて多くの情報を蓄積できているが、平成26年度中にデータベースを公開する計画は果たせなかった。絵本だけでなく、異なる形式の資料を検索することが出来るデーターベースの構想に時間がかかってしまったためである。 また、資料翻刻・共同研究会は順調に進んでいる。研究会のメンバーも8名に増え、イギリス・アメリカ・メキシコなど様々な国の研究者も参加している。発表後は、レジュメの修正や用語のインデックス作成などを行い、成果報告を視野に入れて研究会を運営している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、データベースの公開を最重要課題として進める。絵本、版画、肉筆画など形式が異なる資料をどのように情報公開することが最も有効なのかを検討し、構想がまとまり次第データベースの構築作業をすすめる。 また、雛形本研究会の拡大版として、祐信と着物というこれまであまり着目されてこなかったテーマで着物研究者などを招聘した研究会を開催する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度中に予定していたデータベース構築が次年度以降へと変更になったため、データベース作成費として計上していた予算が未使用となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の主な研究計画は、(1)データベースの構築・公開、(2)ホノルル美術館における祐信絵本の調査、(3)雛形本研究会の定期開催である。データベースの作成費は、平成26年度に未使用となった予算を使用する。
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