本研究では、江戸中期に京都を拠点として活躍した浮世絵師である西川祐信(1671~1750)に着目し、18世紀上方出版文化から江戸の都市文化へと続く知の連環を考察することを目的に、主に下記の研究を進めた。 (1)祐信全作品目録の作成 大英博物館、大英図書館、ホノルル美術館、メトロポリタン美術館、国立国会図書館など国内外の所蔵機関での調査を行い、またデータベースなどで公開されている情報も収集した。それを基に「西川祐信総合作品データベース」(http://sukenobu.net/)を公開し、情報の発信・共有を行った。本サイトでは、前回の科研費若手研究(B)で刊行した論文集『西川祐信を読む』の全頁PDFも公開した。 (2)未翻刻資料の調査・翻刻 月1回「西川祐信雛形本研究会」を開催し、文学史、美術史、染織史などの研究者約10名で『正徳雛形』の翻刻・語釈を行った。また、諸本調査も行った。 (3)関連データベース公開と国際シンポジウム開催 上方の啓蒙主義的書物の潮流を明らかにするため「絵入百科事典データベース」(http://dbserver.nichibun.ac.jp/EHJ/index.html)を構築・公開した。また、雛形本研究会での研究を核にして「国際シンポジウム 絵とことばの350年」を国際日本文化研究センターで開催した。 本研究で作成した目録は完成版ではなく今後も調査・増補を行っていくが、一部からでも目録を公開することで祐信研究の基盤整備を進めることができた。また、雛形本研究会では「着物」「出版」「文学」「風俗」などの切り口から『正徳雛形』を読み解いており、時代やジャンルを限らず多様な研究者が参加することで多角的に京都の出版と都市文化の関連性を考察した。本研究会は引き続き継続し、最終的に出版とデータベースの公開を行う。
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