研究課題/領域番号 |
26870710
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
櫻澤 誠 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (90531666)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 開発 / 基地経済 / 自立経済 / 沖縄戦 / 米軍基地 / 島ぐるみ / 保守 / 革新 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、戦後沖縄/日本における重要な争点であり、近年は「島ぐるみ」運動の要因となってきた、「沖縄戦」と「米軍基地」をめぐる諸問題の形成過程について、経済開発との関連を重視して実証的に検討することである。2年目となる今年度は、初年度と同様、広範な史資料収集を行うとともに、個別テーマとして「恒久基地化のなかの経済開発」、「援護・慰霊と経済開発」についての検討を行った。 広範な史資料収集としては、沖縄県公文書館、沖縄県立図書館、那覇市歴史博物館、沖縄国際大学、国立国会図書館などにおいて、研究課題に関する文献・文書等の収集に努めた。また、元沖縄県知事、元沖縄県副知事などへの聞き取り調査を新たに始めることができた。なお、夏季(8~9月)に勤務校の「海外派遣フェロー」として米国・アメリカ国立公文書館などで1ヵ月間の調査を行ったことを付記しておく。 雑誌論文としては、復帰運動が掲げる「日本国憲法への復帰」の内実が、人権回復への期待から「平和憲法下への復帰」に特化していく過程を検討した「沖縄の復帰運動と日本国憲法―沖縄違憲訴訟を中心に―」(『歴史学研究』939、歴史学研究会、2015年12月)を発表した。 学会発表としては、戦後70年のなかに「島ぐるみ」の系譜を示すことを目的として、歴史学研究会総合部会例会(2016年3月、日本大学経済学部)において、「沖縄現代史のなかの「島ぐるみ」の系譜」と題して口頭報告を行った。 図書としては、民衆運動にとどまらず、保守政治家や財界人、そしてその支持層までを捉え、沖縄住民の大多数を包含するような総体的な歴史像を構築することを意図して、『沖縄現代史 米国統治、本土復帰から「オール沖縄」まで』(中公新書、2015年10月)を刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、前年度と同様、史資料収集に力を注ぐとともに、個別テーマの検討も進めることができた(その成果の一部は、単著『沖縄現代史 米国統治、本土復帰から「オール沖縄」まで』に反映されている)。そうしたなかで、史資料収集については、沖縄、東京においてそれぞれ複数回調査を行い、さらに本科研とは別枠ではあるが、米国での集中的な調査を実施するなど、本研究をまとめていく上で、大きく進展させることができた。 成果としても、1件の論文発表、1件の学会発表、1件の図書刊行を行うことができた。一層充実した成果を達成していく必要はあろうが、一定の水準は満たすことができたと考えている。 さらに今年度は、『沖縄の保守勢力と「島ぐるみ」の系譜―政治結合・基地認識・経済構想―』と題して、平成28年度の科学研究費(研究成果公開促進費)に申請し、それが採択された。平成28年度中に刊行される同書は、本科研の重要な成果の一つとなるものである。
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今後の研究の推進方策 |
史資料収集については、前年度までと同様、沖縄、東京での調査を行うとともに、米国国立公文書館での調査を行う予定である。聞き取りについても継続して行っていく。 個別テーマとしては、「復帰前後の経済開発」について、さらに検討を行う。そして、本科研のこれまでの成果をふまえて先行研究との比較をしながら沖縄戦後史像の再検討を行う。 また、研究の進展に応じて、各種団体の調査対象や聞き取り対象を広げたり、個人所蔵史料の調査を追加実施することなどによって、収集史料を充実させ、改善を図っていく。 さらには、研究を停滞させずに円滑に進めるための新たなアイディアを得られるよう、学会・研究会には積極的に参加し、沖縄を専門とする研究者だけでなく、関連諸分野の研究者と意見・情報交換を積極的に行っていく。
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