本研究の目的は、戦後沖縄/日本における重要な争点であり、近年は「島ぐるみ」運動の要因となってきた、「沖縄戦」と「米軍基地」をめぐる諸問題の形成過程について、経済開発との関連を重視して実証的に検討することである。最終年度となる今年度は、これまでと同様、広範な史資料収集を行うとともに、個別テーマとして「復帰前後の経済開発」についての検討を行った。そして、三年間の研究成果をふまえて、経済開発の歴史を組み込んだ沖縄戦後史を再構築するための作業を行った。 広範な史資料収集としては、沖縄県公文書館、沖縄県立図書館、国立国会図書館などにおいて、研究課題に関する文献・文書等の収集に努めた。また、元沖縄県知事・副知事などへの聞き取り調査を継続して行うことができた。さらに、米国・アメリカ国立公文書館において史料調査・撮影を行った。 雑誌論文としては、沖縄戦後史研究の再構築を企図して、「沖縄現代史のなかの「島ぐるみ」の系譜」(『歴史学研究』949、2016年10月)、「沖縄現代史研究の現在」(『二十世紀研究』17、2016年12月)をそれぞれ発表した。 学会発表としては、同じく沖縄戦後史研究の再構築を企図して、現代史研究会(2016年7月9日、京都大学)において、「沖縄現代史研究の現在」、大阪教育大学歴史学会2016年度大会(2016年8月6日、大阪教育大学)において、「いま沖縄現代史研究が問うもの」と題してそれぞれ口頭報告を行った。 図書としては、本研究の成果をふまえ、『沖縄の保守勢力と「島ぐるみ」の系譜―政治結合・基地認識・経済構想―』(有志舎、2016年12月)を刊行した。また、今後の研究に繋がる萌芽的研究として、共著『戦後日本の開発と民主主義―地域にみる相剋』(庄司俊作編、昭和堂、2017年3月)に「沖縄における観光業の変遷―戦後・草創期における模索」を収録し刊行した。
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