研究課題/領域番号 |
26870711
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
福井 善朗 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (30710652)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 非線形制御 / 多様体 / 制御Lyapunov関数 / 局所半凹関数 |
研究実績の概要 |
ロボティクス分野における自律移動制御に対する貢献をモチベーションとして,非可縮な多様体(穴が開いた空間)上の非線形システムに対する大域的な制御の設計法を考えた.従来法である多層最小射影法は微分不可能な制御Lyapunov関数の設計法であり,Rifford-Sontag型制御則と組み合わせることで大域的な制御が設計できることが期待されるが,ロボティクス分野への適用を行うには理論に未整備な点があった.そこで,本年度は時変システムへの拡張や多層最小射影法の適用に必要な層の設計法の開発に取り組むことで,多層最小射影法の理論的な整備を行うことを交付申請書では述べた. まず,時変システムへの拡張を行う前に,時不変なロボットシステムへ多層最小射影法がどこまで適用可能か確認を行った.これまでの研究では多層最小射影法は,Rifford-Sontag型制御則が要求する局所半凹実用制御Lyapunov関数の設計が可能であるかどうかは示せていなかったため,証明を行った.証明は意外にも自明ではなく,局所半凹関数の定義や一般化微分の一種である分解微分の性質を整理する必要があった.結果,研究の副産物として,可到達微分・フレシェ微分はそれぞれ極小分解微分・極大分解微分と等しいことが明らかになり,局所半凹関数に対する一般化微分同士の関係を明らかにすることができ,結果を論文として投稿した(査読中). 層の設計法の開発法として,ベルマンフォード法を使った層の設計法を提案し,国際会議に投稿したが証明の不備を指摘されたため,修正・再投稿作業を行っている.また,層の設計法を検討中に,最小射影法は時変システムに拡張せずとも,二台同時トラッキング制御に適用可能な場合があることに気づき,発表を行った. その他,若年層をターゲットとした研究成果発信として,マイクロマウスロボット競技の推進に関する2件の国内会議発表を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多層最小射影法は局所半凹実用制御Lyapunov関数の設計法としてもつかえることを証明することにとどまり,時変なシステムに対する制御則の検討が思ったように進まなかった. 一方で,二台同時トラッキング制御への適用性を明らかにし,ロボティクス向けのアプリケーションを開発したことや,分解微分の定義を整備したことで多層最小射影法により制御則がより容易に設計可能になった副産物があった. これは当初の計画で2年目に行う予定だった研究を一部前倒していることに相当するため,研究全体としては,研究の目的に述べた「ロボット分野への貢献」が,おおむね順調に進展していると考える.
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き,システムが定義される空間が時変なシステムの大域的漸近安定化制御法の開発ならびに層の具体的な設計法の提案を行う. また,研究の副産物として得られた研究成果をより進め,ロボティクス分野における制御問題へより簡単に提案法が適用できるような理論体系の構築を行う.具体的には,分解微分の性質を調べていると,多層最小射影法により得られた局所半凹実用制御Lyapunov関数の分解微分を計算するには,ヤコビ行列による行列演算を行う必要がある問題点が明らかになった.これに対し,計算量削減のため,差分微分により分解微分を近似できるかどうかの検討を行う.予想される結果としては,差分微分により偏微分を近似してしまうと分解微分の近似が得られない場合が存在するが,方向微分によるリー微分の計算は正しく近似できることが挙げられる. 次年度は3年計画のうちの2年目であり,中間期にあたる.中間発表として,一般市民に対して開かれた研究成果報告会を開催し,税金をもって行われた研究内容の説明も行いたいと思う.
|