研究課題/領域番号 |
26870714
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
福田 茉莉 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (70706663)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | QOL / 難病 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,難病患者を対象とした生活の質(QOL)とその支援について多角的に検討することである。本年度は初年度ということもあり、個人の生活の質(iQOL)を検討するうえで重要となる方法論・認識論を重点的に考察した。とりわけ、人間の行為や様態を時間や空間の中で、つまりは個人や社会との関係性の中で取り扱う文化心理学の視点に立脚した議論を展開した。 質的研究法のひとつである複線径路等至性アプローチ(TEA)は、個人を開放系システムから分析する手法の一つであり、包括的に個人の人生径路を記述することができる。本研究では,QOL研究にTEAを導入することで明らかになる患者のiQOLとその議論の限界を考察した。難病患者のライフは病いそのものだけではなく、病態の進行やそのときの医療介入への評価、家族の状況、生活世界への支援状態、生きがいの有無などによっても変容する。これらのライフの質を詳細に捉えることは、患者への適切な医療介入や看護計画、具体的な支援方略を考えるうえで重要な指針となるだろう。したがって、TEAのようなシステミックな視点をもつ方法論の導入が不可欠となる。このことにより、個人のライフを生命、生活、人生という多層的な質をもつものの複合体として捉え直し,QOL概念そのものを再検討することができると考えられる。昨今では、患者の経験を重視した評価法(Patient experience measure)への注目が高まっている。本研究もこの動向を注視しつつ、今後の研究計画を遂行する予定である。なお、これらの研究成果は、書籍や所属学会での発表により報告された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画はQOL概念の方法論や認識論を検討することであり、文献調査だけでなく、一部書籍として公表できた。この点は研究計画以上に進展していると判断できる。しかし、難病患者を対象とした調査それ自体は、研究者―患者間の日程調整等が難航し、計画の通りには進展することができなかった。これらを総合的に判断し、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後も研究計画のとおりに研究課題を遂行する。ただし、本年度研究計画通りに進展しなかった患者調査に関しては、来年度はより精力的に実施する。患者会や情報登録サイトを通じて研究活動を紹介し、調査への協力を依頼する。研究成果の公表に関しては、本年度と同様、国内外で開催される学会での研究報告、学術論文への投稿、所属大学のホームページでの研究紹介、など積極的に実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の研究計画には患者調査の実施が含まれている。本研究の対象となる難病患者は重度の身体障害を抱えるものが少なくなく、申請者が患者宅あるいは医療機関を訪問する必要がある。したがって、患者調査を実施するための旅費は研究課題を遂行するうえで不可欠である。また、インタビューを用いた調査は患者の拘束時間も長く、また付き添う介助者の負担も大きい。したがって、謝金等の支払いも妥当であると考える。しかし、当初調査を予定していた患者の病態が悪化したことにより、本年度は患者調査を延期さざるを得なかった。したがって、旅費の一部や謝金、テープ起こし等の委託に伴う予算は、来年度への繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
以下の通りに予算を執行する予定である。 研究課題を遂行するうえで必要となる器材や消耗品、書籍の購入を引き続き実施する。さらに、本年度は実施困難であった患者調査を実施することにより、旅費や謝金、テープ起こし等を業者に委託する予定である。また国内外の学会等で研究報告を実施し、研究者間での交流、あるいは新たな知見を得る機会を設ける。研究成果の公表をするため、旅費の一部を充てんする予定である。
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