研究実績の概要 |
新規酸化物半導体デバイス作製のために電子スピン共鳴法(ESR)による格子欠陥の評価を推進した。 InGaZnO4(IGZO)などの酸化物半導体粉末にプラズマによって導入される格子欠陥をESRによって評価した。IGZOには二種類のESR信号が検出されることが明らかとなった。 また、それらの熱安定性を評価することによって、IGZOの主成分であるGa2O3, In2O3, ZnOとは異なる特性を示すことが明らかになった。 これらの酸化物半導体中に導入される格子欠陥に関する知見を基礎として、薄膜の格子欠陥の評価を進めた。具体的には、格子欠陥の薄膜形成時の条件による生成メカニズムの評価を行った。その結果、IGZOは成膜時の条件によって異なる格子欠陥を生成することが明らかになった。 また、新規酸化物半導体デバイスの形成を目指した材料開発を行った。インジウムを含まない新規酸化物半導体材料を見出し、その物性を評価した結果、ワイドバンドギャップであり、可視光において透明であることが明らかになった。さらに、本酸化物半導体について、RFマグネトロンスパッタリング法で成膜する条件によってシート抵抗を制御することに成功した。本材料科を半導体層として用いた薄膜トランジスタの形成に成功し、良好な伝達特性を示すことが確認できた。RFマグネトロンスパッタリング法によって新たに形成されたスズ系の酸化物半導体薄膜トランジスタは、先行材料に匹敵する特性を示すことが確認できた。また、有機金属錯体を用いたミストCVD装置を導入し、半導体薄膜の形成を行うことに成功した。 これらの研究成果を元に、新規レアメタルフリー薄膜トランジスタデバイス作製の足がかりとし、その特性の安定性について評価を進めることができた。
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