研究課題
若手研究(B)
本研究は、公害訴訟終結後の複数の公害地域の状況について、加害責任の明確化や被害救済といった環境正義の回復の追求と、環境再生や社会関係の再構築等による地域共同性回復の状況について、現地でのヒアリング調査と資料調査を行った。その結果、加害―被害構造、訴訟終結条件(判決、和解内容、複数提訴)などの違いによって環境正義と地域共同性の回復状況には違いが見られたが、多くの地域で公害経験の継承を通じて、両者が統合的に実現される可能性が示唆された。
環境社会学
公害問題はすでに克服された過去の事象と捉えられがちだが、その教訓は社会に広く共有されているとはいえず、公害によって疲弊した地域の再生は今なお前例のない課題である。本研究は加害・被害関係を乗り越えて公害を発生させない社会をつくる協働関係の構築を進める鍵を探究したものである。近年公害の当事者が高齢化する中で、その経験を継承する試みが各地で生まれており、新世代による公害経験の継承がその鍵となる可能性が示唆された。