研究課題/領域番号 |
26870719
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研究機関 | 明治国際医療大学 |
研究代表者 |
中島 美和 明治国際医療大学, 鍼灸学部, 助教 (20587513)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腱修復 / 腱断裂 / 鍼通電 / 直流電気 / ラット / 組織学的評価 / 力学的評価 |
研究実績の概要 |
本研究は、腱修復過程に及ぼす鍼通電刺激の影響について調査することを目的として、ラットのアキレス腱断裂処置後モデルを用いて調査した。モデル作成に際しては、断裂部の状況に個体差が生じることを避けるため、アキレス腱の修復に影響を及ぼす下腿三頭筋の収縮が起こらないように足関節を完全底屈位で固定し、腱を鋭的に切断した後は端々縫合を行わずに閉創した。モデルを作成後、無作為に鍼通電刺激群、鍼群、無処置群の3群に分けた。そして、鍼通電刺激群は、軽度麻酔拘束下にアキレス腱断裂部の内外側に先端部が腱断裂部に接触するようにそれぞれ鍼を刺入し、内側部を陰極、外側部を陽極として間欠的直流鍼通電刺激をモデル作成日の翌日から各評価日まで連日行った。鍼群は、鍼通電刺激群と同一部位への鍼の刺入のみ行った。無処置群は、麻酔拘束処置のみとした。評価として、モデル作成後3日、7日、10日に修復腱を採取して標本作製後、HE染色により細胞の局在を観察した。さらに、腱の修復に関与するサイトカイン(TGF-β1、b-FGF)に対する免疫組織化学染色を行い、それぞれの発現量について確認した。その結果、モデル作成後3日においては、鍼通電刺激群ではTGF-β1陽性細胞の有意な増加とb-FGF陽性細胞の増加傾向を認め、続くモデル作成後7日においては、同群でTGF-β1およびb-FGF陽性細胞の有意な増加とともに、全細胞数の有意な増加が確認された。そして、モデル作成後10日においては、鍼通電刺激群で全細胞数およびb-FGF陽性細胞の有意な増加を認めた。これらのことから、腱断裂後早期において鍼通電刺激を行うことにより、修復に関わる成長因子の発現に促進的に作用し、それに続き、線維芽細胞をはじめとする細胞の活性化を促すことが示唆された。本研究の結果は、医学雑誌に投稿、掲載された。また、医学会において研究内容の一部を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではアキレス腱断裂処置後モデルラットを用いて、腱修復過程に及ぼす鍼通電刺激の影響について調査するため、修復促進効果の有無を確認する指標として、組織学的および力学的評価を行う計画を立てた。概ね2年間で行う研究として、平成26年度は組織学的な観点から検討することを目的に、組織の形態、細胞の局在、それに成長因子の発現について観察し、その上で、平成27年度は、修復腱の力学的強度を測定する見込みである。このような研究計画を立てた理由は、鍼通電刺激の効果を捉えるには先ず、腱修復部において組織学的に如何なる変化が起こっているのか確認し、その変化が臨床的に価値のあるものとなるか、つまり、修復腱の力学的強度の再獲得に繋がるか否かについて検証する必要性を考えたためである。組織的な変化が、腱の機能的変化に直結してこそ、介入の有用性を唱えることができる。そのためには、組織学的、力学的両面からの検討が必須と考える。平成26年度に予定していた組織学的評価に関しては、評価項目、評価日については若干変更したものの、凡そ計画通り遂行した。そして、腱断裂後早期において断裂部への直流鍼通電刺激を行うことにより、腱修復に関わる成長因子の発現や線維芽細胞をはじめとする細胞活性を促進する可能性を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に予定している力学的評価に関しては、当初、モデル作成後早期のみの観察を計画していたが、腱癒合が完了した時点、即ちモデル作成後90日の評価を加える。断裂後早い段階で腱癒合が得られれば、長期間固定することによって生じる周囲組織との癒着による関節拘縮などの合併症を予防することが可能となり、十分に有意な成果であると言える。それに加えて、長期経過後の力学的強度にも好影響を与えることが確認できれば、再断裂に対する予防の一助となる可能性も期待でき、さらなる臨床的価値が生まれる。これらの結果を年度内にまとめ、医学会雑誌への投稿を目指す。
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