今年度は順調に研究を行い、成果を出すことが出来た。昨年度六つの学会で発表した、コンテンツユーザに対するインターネット調査結果に対し、多変量解析の一種である因子分析を行い、アンケートデータから個人ベースのコンテンツ消費者性質などの成果をまとめ、「調査と因子分析によるエージェントベースモデリング―デジタルコンテンツ市場における消費者行動を事例に」の題名で投稿し、社会経済システム第37号に掲載される。我々が提案する、複雑な社会現象に対する研究手法として、「アンケート調査→多変量解析によるデータ解析→エージェントベースモデリング→ハイブリッドゲーミングシミュレーションによるモデル検証→エージェントベースシミュレーション→制度設計」の有効性を明らかにした。 一方で、いくつかの技術的な問題とも遭遇し、継続的な研究が必要になることも判明した。シミュレーションの結果と現実との照合のために、現実世界の現象の把握が必要である。コンテンツ産業の場合、売上げの把握は出来るが、制作されたコンテンツ属性の推定は属人的なスキルが必要であるため、現在大量に制作されたコンテンツに対し、安価の方法で把握することが困難であるため、新しい手法の開発が必要になる。問題点に関しては、社会経済システム学会第35回大会にて、深層学習などを利用した新しいデータ分析手法の必要性と可能性について、発表した。 また、開発した手法の応用例として、計測自動制御学会システム情報部門第12回社会システム部会研究会にて、賭博行動と無謀な意思決定、そしてパーソナルティ要因との関連性に関する発表を行った。結論としては、無謀な賭博を行うギャンブラーの心理的要因の特定及び、それに基づく制度設計の可能性を示した。このように、本研究の手法は多様性の高いコンテンツ分野だけではなく、心理的要因の分析を加えれば、カジノなどのゲーミング産業での応用も期待できる。
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