研究課題/領域番号 |
26870721
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
佐々木 智康 大阪医科大学, 医学部, 非常勤医師 (10411365)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 先天性心疾患 / ブラロック短絡術 / 流量調整 |
研究実績の概要 |
人工血管流量調整デバイスの基本構造の決定と試作作成:内側方向にだけ膨張するように設計された円筒形のポリウレタン製のバルーンを開発した。全長を2cmとし内部に径5mm のPTFE 人工血管を内挿して使用するものである。バルーンは皮下ポートに接続され、注入された生理食塩水の量でバルーンの拡張度が可変されることによって人工血管の径を変化し血流量が調整される。 シミュレーション回路を用いたデバイスの性能評価試験:本デバイスを装着した径5mm のPTFE 人工血管を循環回路に接続し、人工血管前後での圧力差と回路流量の関係を測定した。バルーン内容量の変化に伴う圧‐流量関係は良好に平行移動し、再現性があった。径3.5mm 人工血管と同等の圧‐流量関係を得るバルーン容量が決定された。 生体内におけるデバイスの埋植と性能評価試験:ビーグル犬の内頚動脈を本デバイス装着の径5mm のPTFE 人工血管で置換した。埋植直後のバルーン注入前後およびバルーン注入維持3か月後のバルーン虚脱前後における人工血管末梢側の血流を超音波ドップラー検査で観察・測定した。バルーン容量は径3.5mm 人工血管を再現する量とした。最大流速は埋植直後のバルーン注入前199.0 ± 5.4cm/sから注入後は90.7± 1.6cm/s と平均33.4%と減少し、再現性も良好であった。3 か月後のバルーン注入状態50.8 ± 0.3cm/s から虚脱により90.6 ± 1.2cm/s と平均59.6%増加し、拍動性も良好であった。摘出標本の組織学的観察ではデバイスと人工血管の間隙に組織浸潤を認めなかった。 研究発表:国内関連学会で成果を報告した。実用化(上市化)を望む多数の意見が寄せられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度は、到達目標としていた、デバイスの1次試作、およびビーグル犬を用いた右内頚動脈置換モデルと血管超音波装置による測定系の確立を達成できたのみでなく、平成27年度の到達目標であるデバイスの構造デザイン決定、数カ月に渡る動作確認、摘出標本の評価の一部を実施し得た。 得られた成果の一部を国内学会で発表するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の成果を邦文論文として早急に発表するとともに、国際学会および英文誌での論文発表を行う。 平成26年度で作成された1次試作デバイスを元に、耐久性試験および生物学的毒性試験による評価から2次試作デバイス作成を完成させる。 進行状況によっては、平成28年度に計画しているビーグル犬モデルの変更を行いデバイスおよび人工血管の埋植試験を前倒しで開始する。このモデルは本デバイスの臨床応用の対象となるBlalock-Taussig shunt手術を模倣したもので、鎖骨下動脈と肺動脈間に人工血管を縫着する。現時点で確立された同モデルの報告は文献上見当たらないため、困難が予想される。
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次年度使用額が生じた理由 |
納入業者との交渉により実験動物および人工血管等の手術材料の購入価格の低減が得られたこと、および1次試作デバイス作成費用の一部を研究協力者の東海メディカルプロダクツ株式会社が負担したため残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
この残金を平成27年度の研究計画での物品購入等で執行する計画である。
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