平成26年度から平成29年度までの4年間に渡り、振動により発電する小型発電装置の実現に重要な役割を果たす「エレクトレット」と呼ばれる材料の高性能化について研究を行った。 平成26年度は、二酸化シリコン(SiO2)を基本材料として、これをナノメートル級の空孔を有する多孔体とすることにより、単純なSiO2と比較して電荷保持密度を約2倍に引き上げることに成功した。また、このSiO2の多孔体を用いることで、振動発電装置の発電効率を通常のSiO2をエレクトレットとして用いた場合に対して約2倍まで増加することを見出した。 平成27年度は、材料をフッ素樹脂の一種である「CYTOP(旭硝子社製)」に変更し、エレクトレットの高性能化に関する研究を実施した。結果、CYTOPにナノメートル級の微粒子を混合することで、その電荷保持密度が向上することを見出した。また、粒子の材料と混合比を変えて特性を評価した結果、チタン酸バリウムをCYTOPに対して重量比で1%混合させた時、最も電荷保持密度が向上することを見出した。 平成28年度および29年度では、再び材料をSiO2として、エレクトレットと可動電極の間の貼り付き防止に関する研究を実施した。結果、SiO2表面にマイクロメートル級の微細な凹凸を付与することにより、上述の貼り付き力を約1/2に抑制可能であり、なおかつ表面電荷密度は約1.5倍になることを見出した。また、我々の開発した振動発電装置に通常のSiO2をエレクトレットとして組み込んだ場合、振動の加速度が0.3g(gは重力加速度)以下の場合は可動電極との貼り付きにより発電が行えないのに対し、凹凸を付与したSiO2製エレクトレットを用いた場合では加速度0.1gの弱い振動でも発電することを見出した。 今後は本研究で得られた成果を統合した、発電装置の更なる高性能化および実用化に取り組む予定である。
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