研究実績の概要 |
きのこ類微生物の最大の特徴は、子実体形成という形態的変化であるが、生化学的なメカニズムは未解明である。当研究室では、各種プロテアーゼ阻害剤を用いた実験により、プロテアーゼ群の活性化と不活化が子実体形成に深くかかわり、形態変化の制御因子として働いていることを報告してきた。 しかしながら、それらの1次構造は不明であり、N末端アミノ酸配列からの1次構造予測が困難であった。そこで、2011年にForestGENde公開されたシイタケゲノムデータベースより、プロテアーゼとしてアノテーションされている遺伝子を、16種(Eqolisin様遺伝子4種,Pepsin様遺伝子7種,Metallo protease様遺伝子5種)抽出した。プロテアーゼ遺伝子群の発現量を解析したところ,栄養生長菌糸期ではg866遺伝子(Pepsin-A like protein)が顕著に発現していた。また,子実体原基形成期ではg10056遺伝子(Eukaryotic aspartic protease),g584, g1220(peptidase family M28), g4055(peptidase family M13)の発現量が増加し、菌糸期に顕著に発現量が確認されたg866遺伝子は減少していた。上記の4遺伝子(g10056、g584、g1220、g4055)がシイタケ子実体形成に関わることが示唆された。 また、ブナシメジの子実体形成に関わるメタロプロテアーゼに関しては、ブナシメジ菌床よりメタロプロテアーゼを精製し、そのN末端配列および内部配列を決定した。これらの情報をもとに遺伝子クローニングを行い、Fungalysin metallopeptidase (M36)に属することを解明した。
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