本研究では、耐塩性細菌を活用して、新たな物質変換技術の開発を目的とする。イオン液体は常温で液体の有機塩であり、親水性イオン液体と疎水性イオン液体に分類できる。現在、イオン液体を溶媒として化学製品群、医薬品などの生産技術が開発されつつある。我々は、親水性イオン液体[BMIM][Cl]耐性・耐塩性Bacillus amyloliquefaciens CMW1を独自に発見している。そこで、本菌株と酵素の[BMIM][Cl]耐性機構の解明、さらに耐性酵素の開発を目的とした。 現在まで、Bacillus属細菌のイオン液体耐性機構は不明である。そこで、H26-H27年度には本菌株のゲノムDNAを解読し、タンパク質をコードする遺伝子 9175 個を見いだした。B. amyloliquefaciens CMW1の[BMIM][Cl]耐性には、浸透圧に対する応答が関与していることを示した。B. amyloliquefaciens CMW1がコードするイオン液体耐性プロテアーゼ(BapIL)遺伝子を単離した。新規な親水性イオン液体[BMIM][Cl]耐性プロテアーゼを精製酵素画分として得た。これに加えて、D-アラニン-D-アラニンリガーゼ(DDL)遺伝子、抗菌ペプチド遺伝子(BacIId)を見いだして、異種発現系を構築できた。 H28年度には、各酵素や抗菌ペプチドの諸性質を検討した。特に親水性イオン液体[BMIM][Cl]耐性プロテアーゼの諸性質を検討して、イオン液体耐性には塩耐性、アルカリ耐性が関与することを示した。また抗菌ペプチドを用いて、抗菌スペクトルや抗菌活性に関与するアミノ酸を推定した。以上の研究実績を取りまとめて論文で報告した。
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