研究課題/領域番号 |
26870733
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
森本 健志 近畿大学, 理工学部, 准教授 (60403169)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 雷放電 / 積乱雲 / 気象 / 気象災害 / レーダ |
研究実績の概要 |
夏季は岐阜県東濃地方、冬季は富山県魚津市および新潟県上越市の観測結果を中心に解析を進めた。東濃地方と上越市の観測地点には、雷放電路の進展様相を可視化するVHF帯広帯域干渉計と、電界変化測定装置、および光学観測系を展開し、前年度から継続して観測を行った。魚津市では、干渉計観測に加え、放送用電波の大気中伝搬のモニタリングと高分解能気象レーダによる観測体制を整えている。これらの地域全体を対象とする、落雷の発生と位置を検知し雷撃電流値を推定するLLSの観測データの提供も得て、各種観測結果を統合した解析により、「潜在的積乱雲エネルギーのリモートセンシング」を試みている。 夏季の雷雲については、電力設備等への雷撃被害が大きい正極性落雷と、多地点・多重落雷に注目した解析を行った。正極性落雷では稀である多重落雷の進展や、双方向性リーダの負リーダだけではなく正リーダの進展様相を知ることできた。また、多地点落雷の後続雷撃が、直前の雷撃の放電路ではなく、もう一つ前の雷撃の放電路を通る落雷があることや、先行するリーダと途中まで同じ放電路を通った後続のリーダが、別の道を進展し大地の異なる点に至る多地点落雷があることが認められた。 冬季の落雷については、送電鉄塔などの高構造物から上向き放電で開始する正極性落雷と、雲内からの下向き放電で開始する負極性落雷の干渉計観測結果と光学観測結果を比較し、雲内の雷放電進展様相と電荷分布を考察した。一度の帰還雷撃で雲内の電荷は完全に中和されず一度絶縁破壊された放電路を辿ってより広い範囲に電荷を求めて進展するリーダ進展が明らかになった。 魚津市では、平成27年度10月より高分解能レーダ観測を可能とした。同年度は夏季・冬季ともに近年例がないほど雷活動が少なく、十分な量のデータ蓄積には至っていないが、本研究の目的達成のための観測体制整備と機能検証ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大阪、岐阜、新潟、富山において、各種観測装置を併用した雷放電および積乱雲観測を実施した。平成27年度は、夏季・冬季ともに近年例がないほど雷活動が少なく、十分な観測機会を得ることができていない。これに加えて、岐阜の観測所では、VHF帯広帯域干渉計のアンテナ故障が発生し、その原因究明と改善に時間を要した。富山の干渉計観測には、周囲の環境雑音やマルチパス等によると思われる影響が見られる。このため、雷雲内の電荷量推定に必要なデータが揃う雷放電事例が限定されていることから、やや遅れているとした。しかしながら、本年度中に不具合は解消でき、観測感度設定の見直しも実施した。また、前年度までに取得したデータを使用た解析を進め、興味深い結果を得ることができた。不足している観測データについては、他の研究機関が取得しているデータの提供を受けることで補おうとしている。 富山で前年度から実施している放送用電波のモニタリングと高分解能気象レーダ観測は、当初の研究計画以上の体制が整い順調に稼働しているし、落雷による中和電荷量や雷雲内電荷分布について採用する推定手法を決定した。これらについては当初の計画通りまたはそれ以上に順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに整備した各地の観測を、安定的に継続して実施し、必要な観測データを集める。データが取得され次第、これまでに検討を行っている雷放電による中和電荷量や雲内電荷分布推定法を適用し、結果を考察する。特に、高分解能レーダによる積乱雲の観測と、電磁波と光学を併用した雷放電観測を相補的に解析し、推定手法の妥当性を検証する。 関連研究機関が取得している観測データも最大限利用し、関連研究者とのセミナーにより議論を重ねる。当初の計画以上に強力な観測体制を実現している富山では、季節毎に対象を絞った強化観測を実施する。
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