研究課題/領域番号 |
26870734
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
後藤 孝夫 近畿大学, 経営学部, 准教授 (60435097)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | タクシー事業 / 生産性 / 規制政策 / 多重比較 / 経営指標 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、タクシー事業に関する国内外の経済理論研究および実証研究の文献調査を実施した。あわせて、日本のタクシー事業に関するデータについて、昨年度に引き続き、可能な限り収集に努めた。以上を踏まえて、本年度の研究成果は大きく以下の2つに分類できる。第1に、1991年度から2011年度までの21年間におけるタクシー事業の全要素生産性の計測を行った。計測の結果、①分析対象期間においては、TFP成長率はおおむねマイナスが続いていること②タクシー事業の規制政策が変更された期間では、需給調整規制の撤廃以降、2002年度から2006年度の5年間では3か年でTFP成長率がプラスになり、他の期間に比べると生産性の改善があったことの2点が明らかとなった。 第2に、流し営業が主体となる大都市のタクシー事業を分析対象として、その経営指標である収益性指標、生産性指標および運行効率指標に対して、規制政策の変更が与えた影響について多重比較をもとに分析を行った。分析の結果、①どの経営規模においても、タクシー事業者の全事業営業収益は1991年度から減少傾向にあったこと、②収益性指標に関する分析を行った結果、大都市のハイタク事業では経営に投下した資本をタクシー事業者が有効に活用できていなかった可能性があること、③生産性指標の分析を行った結果、どの経営規模のタクシー事業者も全体として労働生産性が低下していたことの3点が統計的に明らかとなった。 以上の分析結果に基づいて運行効率指標の分析を行った結果、現行制度下で労働生産性を高めることによって収益性を改善するためには、経営規模にかかわらず実車率を高める方法を重点的に検討すべきということを指摘した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題が本年度までに計画を予定していた内容(4点)のうち、①産業組織論の視点によるタクシー市場に対する政府の介入手法に関する最新の研究動向の文献調査、②入手したタクシー事業に関するデータのデータベース構築、③入手データに基づくパネルデータ分析の実施の3点についてはおおむね達成できたと考えられる。 ただし、データ収集に予想以上に時間を費やしたため、本年度までに研究実施を予定していた ④地域ごとの経済厚生の推計と規制の変更前後での厚生比較については次年度に持ち越すこととなった。以上から、本年度の達成度を「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度は本研究課題の最終年度となるため、本年度までに蓄積した知見を広く公表することに重きを置く予定である。具体的には、来年度に上海で開催される14th World Conference on Transport Researchより報告を許可されたため、“A Demand Analysis of Regulated Taxicab Markets: Evidence from Japan”と題して報告を行う予定である。また、国内外の査読付雑誌に積極的に投稿していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
国際学会へ提出する論文(2016年3月末締切)の英文校正作業に予想以上に時間を費やしてしまったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
2016年3月31日現在ですでに英文校正作業は終了し、次年度使用額に計上された金額についてはその校正作業金額として支出することが確定している。
|