本研究は、学生を対象として作成された感情投影表情描画法を用い、成人を対象としたFACEDの有用性を検討することを目的に実施した。 一定期間仕事をしている成人325名を対象に、「基本属性(年齢、性別)」「多面的感情状態尺度(MMS)」「内面のポジティブ傾向を評価するスピリチュアリティ評定尺度B(SRS-B)」「表情描画シート」で構成された質問紙調査を実施した。その結果、男性82名、女性112名、計194名(41.24±10.23歳)の有効回答が得られた。この有効データを使用して、まずMMSの下位尺度得点とSRS-B得点において因子分析を行い、ネガティブ感情(N感情)因子を選別した。次に、N感情因子に含まれた各尺度得点の平均値と標準偏差を参照してN感情高得点者を選出し、表情描画シートに描かれた特徴的な顔パーツを特定した。最後に、スコア化されたN感情・非N感情を従属変数、MMSの下位尺度得点とSRS-B得点を独立変数としたロジスティック回帰分析を行い、「倦怠得点:OR=0.847,95%CI=0.719―0.998,p<0.05」および「SRS-B得点:OR=1.214,95%CI=1.008―1.461,p<0.05」を確認した(回帰モデル正分類率72.2%,p<0.001)。 以上より、FACEDが成人のN感情(倦怠)および非N感情(SRS-B)の把握に有用であることが示唆された。
|