研究課題/領域番号 |
26870740
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
赤澤 春彦 摂南大学, 外国語学部, 講師 (90710559)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 宇佐八幡宮 / 陰陽道 / 陰陽師 / 神仏習合 |
研究実績の概要 |
1年目にあたる26年度は宇佐八幡宮における陰陽道・陰陽師の実態を把握するため、すでに刊行されている史料集を調査して、関係文書の収集にあたった。『大分県史料』(大分県史料刊行会)と『宇佐神宮史』(宇佐神宮庁)を閲覧し、「到津文書」「永弘文書」「小山田文書」「益永文書「矢野文書」「北和介文書」「辛嶋文書」「宮師文書」「宮成文書」「薦神社文書」「今永文書」「広崎文書」「宇佐宮現記」「宇佐郡文書」から、計162点の関係史料を検出できた。このように多数の家文書に陰陽道・陰陽師関連の史料を見いだすことができたのは大きな収穫であった。なお、このうち「到津文書」「永弘文書」「宮師文書」「益永文書」については、東京大学史料編纂所に架蔵されている影寫本及び収蔵されている写真帳から校合を行った。 次に『神道大系 巻四十七宇佐』(神道大系編纂会、1989年)に所収されている「宇佐宮寺年中行事一具勤行次第」「宇佐宮年中行事案」「宇佐宮寺年中月並神事」「宇佐宮寺造営并神事法会再興日記」「宇佐宮斎会式」などから宇佐の神事、仏事、年中行事の概要を把握し、最も重要な行事の1つである放生会の現地調査を行い、関係者から聞き取り調査を行った。現在では陰陽師の存在は認められなかった。また、大分県立図書館、宇佐市立図書館において関連論文などの文献収集にあたった。 これら収集した史料をもとに、本年度の目的である、①宇佐八幡宮の神職制度における陰陽師の位置、②宇佐八幡宮の神事・仏事における陰陽師の役割、③宇佐の陰陽師の領主としての実態について考察し、その成果を2015年8月に開催される日本宗教史懇話会サマーセミナーにおいて報告する。このほか、本年度の成果として、宇佐を含む西国地域における陰陽道の展開についてシンポジウムで報告した(就実大学吉備地方文化研究所古代地域史フェスタⅣ「西国における宗教の展開」)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の進捗状況としてはおおむね順調に進展していると評価する。その理由としては、本年度の目的として掲げた3点、①宇佐八幡宮の神職制度における陰陽師の位置づけについて検討する、②宇佐八幡宮の神事・仏事における陰陽師の役割を検討する、③宇佐の陰陽師の屋敷および所領を調査し、領主としての陰陽師の実態を解明する、についてすべて達成することができたからである。これらについて考察した成果は2015年8月に行われる日本宗教史懇話会サマーセミナーで報告する。 本年度の具体的な成果として、近年の陰陽道史全体を総括した論文「陰陽道・陰陽師をめぐる研究の新展開」(『歴史評論』776号)を発表した。また、宇佐を含む西国地域における陰陽道の展開について「古代・中世の西国と陰陽道」と題してシンポジウムで報告した(就実大学吉備地方文化研究所古代地域史フェスタⅣ「西国における宗教の展開」)。
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今後の研究の推進方策 |
26年度の成果を受けて、27年度は当初の研究計画書の通り、近世以降の陰陽師の存在形態に関する調査と宇佐及び周辺地域における陰陽道に関わる民俗行事の調査を進める。 前者は古文書調査など歴史学的手法による調査と、聞き取り調査など民俗学的手法による調査を並行して進めていく。後者については、大分県および宇佐市の民俗調査報告書を参照して調査対象を絞り込むが、まずは宇佐八幡宮周辺の地域から順次行っていく。 また、26年度で明らかにした陰陽師の所領、屋敷跡について現地で確認調査を行う。陰陽師の所領は下毛郡本自見名(現中津市)に確認でき、屋敷跡は宇佐八幡宮の参道に存在したことが確認できた。景観調査などを行い所在地を特定し、立地的環境を明らかにする。
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