本研究は、日本人旅行者と外国人旅行者、地元居住者が撮影した写真の分析を通して観光地の魅力を明らかにすること、新しい調査手法としての観光写真調査法を確立することの2点を目的とした。 平成26年度は、歴史観光地である奈良市と都市観光地である大阪市の宿泊施設において旅行者を対象とした観光写真調査を実施した。そこで見出された課題を踏まえ、観光写真調査法の手続きに改良を加えた。撮影者自身に写真を分類してもらうことによって、一つの観光資源が内包する複数の魅力や価値を見出すことができることが分かった。 平成27年度は、奈良市において観光写真調査を実施した。魅力的な観光資源が何かを明らかにすることと、出身国や訪問経験の違いによって魅力を感じる対象はどのように異なるのかを明らかにすることを目的とした。調査対象者は、日本人旅行者25名、外国人旅行者50名、地元居住者7名の計82名であった。分析の結果、日本人とアジア系旅行者は鹿、自然、風景、消費に関する写真が多い一方、欧米人は寺院建築、仏像、オブジェの写真が多いことが分かった。また、訪問経験を積むことによって魅力の対象が変化することや、被写体が全景からモノへと移行することが明らかになった。これによって、観光写真調査法を個人が観光地に対して抱く集合的・個別的イメージ(魅力)および、個々の観光資源に付与された価値を把握することができる調査手法として確立させることができた。 また、初年度と最終年度には、観光地の魅力評価に関するweb調査も実施した。調査対象者は各回600名であり、質問項目は観光地のイメージや魅力評価といった観光地側に関する項目と、個人の観光動機や放浪癖傾向、過去の旅行経験(経県値)といった旅行者側に関する項目で構成した。分析の結果、観光地のイメージは3因子構造であることや、旅行経験によって魅力評価の傾向が異なることが明らかになった。
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