研究課題
前年度の研究から、種々のグリア細胞に骨髄間質細胞の培養上清を添加することで、アストロサイトが最も増殖能や活性化に影響を受けることが分かったので、今年度はアストロサイトについて詳細な解析を行った他、脈絡叢上皮細胞の神経再生効果をin vivoで検討した。まず、骨髄間質細胞の培養上清添加することで変動する、アストロサイトが発現する因子を明らかにするために、DNA microarrayによる解析を行った。パスウェイ解析の結果、いくつかのパスウェイで複数の遺伝子が有意に変動していることが分かった。中でも、エストロゲンの生合成に関わる遺伝子の発現が増加していた。エストロゲンは、女性ホルモンのはたらきの他に、神経の新生や再生を促すことが報告されている。骨髄間質細胞の移植や培養上清の投与で神経再生が促進されるメカニズムの一つとして、損傷部周辺のアストロサイトによるエストロゲンの発現の上昇が寄与している可能性が示唆された。それを明らかにするために、現在、骨髄間質細胞の培養上清添加によるエストロゲンの分泌の変動を解析している。今後は、in vivoで骨髄間質細胞の培養上清を投与した脊損モデルラットのアストロサイトによるエストロゲンの発現の変化を解析する予定である。一方で、脳脊髄液を産生し中枢神経系の維持に重要であるグリア細胞の一つである脈絡叢上皮細胞については、炎症条件下で骨髄間質細胞と共培養することによりNGFなどの栄養因子の発現が誘導されることを明らかにしてきた。そこで、脈絡叢上皮細胞が炎症時に神経再生を促すかどうかを明らかにするために、脊髄損傷モデルラットの損傷部に脈絡叢上皮細胞を移植して、神経再生効果を検討した結果、脈絡叢上皮細胞を移植した群では、BBBスコア評価による行動の回復がみられた他、損傷部の再生神経の密度が高いことが分かった。
2: おおむね順調に進展している
骨髄間質細胞の影響でアストロサイトにおいて遺伝子レベルで変動する神経再生関連因子が分かった。別のグリア細胞ではin vivoでの効果を確認できた。
(1) 骨髄間質細胞の培養上清を添加した培養系で、アストロサイトによる目的物質分泌の変動を定量する。(2) 脊髄損傷モデルラットに骨髄間質細胞を移植した時に上記のような変化が起きているのかを検証する。(3) 骨髄間質細胞を移植せずに目的物質の分泌を誘導するか、その物質自身を投与することでの神経再生を試みる。
前年度の結果からグリア細胞のターゲットを絞ったことにより、培地や培地添加物等の培養関連試薬が抑えられたのが主な理由である。
主に培地中に放出されるエストロゲン関連分子を直接定量するための試薬やin vivoでそれらの発現を解析するための抗体を購入することに使用する。
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Restor Neuro Neurosci,
巻: 1 ページ: 印刷中
Aino Journal,
巻: 14 ページ: 印刷中
Spinal Cord
巻: 186 ページ: 印刷中
10.1038/sec.
Neurosci Lett.