研究課題/領域番号 |
26870746
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研究機関 | 大阪保健医療大学 |
研究代表者 |
伊禮 まり子 大阪保健医療大学, 保健医療学部, 助教 (30711311)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 姿勢制御 / 視覚刺激 / 足圧中心 / 外乱 |
研究実績の概要 |
静止している被験者の周りの視覚環境が回転する場合には、身体が左右へ傾斜するような自己運動錯覚が生じ、身体動揺が誘発される。しかし、視覚情報の使い方には個人差が認められるため、外乱の強度によって姿勢応答が変化することが予想される。平成26年度は、より多くの被験者に対して外乱となる視覚刺激方法を確立するため、白黒縦縞模様の傾斜角度および速度の変化が姿勢応答に及ぼす影響について検討した。 視覚刺激は、直径150cm(視角約50度)の円形で視角2度の白黒縦縞模様であり、被験者の2m前方の壁にプロジェクターにて投影した。外乱刺激として、この縦縞を左右方向へ傾斜させた。傾斜角度(5度、10度、15度、20度)および速度(5度/s、10度/s、15度/s、20度/s、25度/s)を変化させ、それぞれ6試行ずつ実施した。それらに加えて、静止した傾斜縞を提示する条件も実施した。 スクリーニング刺激(傾斜角20度、5度/s)にて、45名中14名の被験者に明確な姿勢応答が生じた。本実験は、この14名の被験者に対して行った。視覚刺激に対する姿勢応答は、大多数の被験者において縞の傾斜と同方向に生じ、対側への応答は全試行の5%未満であった。静止した傾斜縞を提示する条件では、いずれの傾斜角においても、姿勢応答が30~40%の試行で認められた。姿勢応答が生じる割合は、傾斜角度が大きいほど高く、傾斜速度が遅いほど高かった。傾斜角20度での5度/s~15度/s、および傾斜角15度での5度/sの刺激では、90%以上の被験者において姿勢応答が認められた。いずれの刺激でも、応答潜時(平均値)は、300-1200msであり、反射潜時よりも極めて長かった。これらの結果は、遅い視運動刺激が自己運動と解釈されることによるものと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
縦縞視覚刺激の傾斜角度および速度の変化が姿勢応答に及ぼす影響について検討するために、当初の計画よりも細かな条件設定が必要であった。その結果、姿勢応答を誘発するための視覚刺激条件を明らかにすることができた。ただし、条件数が大幅に増えたため、平成26年度は足圧中心動揺および筋電図の測定に留まり、予定していた視覚誘発脳電位の測定に着手できなかった。平成27年度は、視覚刺激条件を絞ったうえで脳電位の測定を行い、実験デザインを確立する。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に測定したデータについて、引き続き解析を進める。その成果をまとめ、国内および国際学会にて公表する。 また、多くの被験者で姿勢応答が認められた視覚刺激条件を用いて、視運動刺激時の視覚誘発脳電位を測定し、実験デザインを確立する。その後、周期的床移動外乱時に外乱視覚刺激を同時に負荷し、足圧中心動揺および脳電位を指標として、視覚情報への重みづけの脳内処理過程を検討する。視覚刺激に対して姿勢応答が生じる者をスクリーニングにて抽出し、15名程度の測定を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、実験に使用する機材の一部を共同研究者より借用できたため、所属施設にて実験の実施が可能であった。そのため、大阪-金沢間の旅費が少なく済んだ。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度以降は、設備備品の購入予定はない。前年度に実施できなかった測定を含め、実験の頻度が増加することが予想されるため、実験消耗品(筋電図および脳電位測定のための電極等)の購入、および実験被験者への謝金として随時使用する。 今年度の実験遂行にあたり、所属施設の設備では一部の実験の実施が困難であるため、共同研究者が所属する金沢学院大学にて実験を行う必要がある。したがって、大阪-金沢間の旅費として使用する。
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