本研究の目的は、アニメ作品の舞台と見做される地域=アニメ聖地における旅行者行動の実態の把握、および、住民への意識調査や地域の景観調査を通じて、郊外地域の場所性がいかに変容したかを明らかにすることである。アニメ聖地ではそこを訪れるファンが地域でのボランタリーな活動やウェブ上での情報発信を通じて独特の場所性を地域に付与していることがすでに知られている。その詳細--とりわけアニメファンや地域住民の意識について「虫の視点」から具体的にとらえることを本研究ではねらってきた。 平成27年度は昨年度から引き続き、対象地(久喜市鷲宮、豊郷町、大洗町など)での住民への調査を進めるとともに、アニメ聖地への巡礼行動をとるファン(特に「コア層」「リピーター層」)への聞き取りを中心に調査を進めてきた。前者の調査では、ファンが地域に関与することでもたらされた地域への影響について聴き取りし、それぞれの地域の住民の意識および現状をつかむことができた。後者の調査については、情報発信を積極的におこなっているファンの行動がどのような内発的動機を伴うものか。またその背景となる彼らのライフヒストリーがいかなるものかに焦点を当て、その結果、聖地巡礼をおこなうファンの【世代】によって動機に温度差が見られること、また、コア層に関しては、それぞれの情報発信を通じた自己実現を彼らが志向していることがうかがえた。なお、これまでの本課題の研究成果は地域活性学会第7回研究大会や関西学院大学大学院社会学研究科に提出し受理された博士学位申請論文などにおいて報告した。
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