研究課題/領域番号 |
26870751
|
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
井上 和哉 関西学院大学, 文学部, 受託研究員 (50631967)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 妨害刺激嫌悪効果 / 反応抑制刺激嫌悪効果 / 食行動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,刺激に対する快感情を低下させる現象を利用した食行動を変化させるための新しい方法を開発することである。食行動を変化させるための従来の方法は,対象者のセルフコントロールに任せる部分が大きかった。しかし,食欲は本能的な欲求であり,食べることそのものに快感情が伴うため,意思の力で食行動を制限することには限界がある。そこで本研究では,妨害刺激の無視や妨害刺激に対する反応の抑制により刺激の印象を低下させる方法(妨害刺激嫌悪効果,反応抑制刺激嫌悪効果)を利用することで,食物に対して感じる快感情を低下させ,食行動をコントロールする方法を開発することを目的とする。 平成26年度の研究では,食行動を変容させる方法を開発する前段階として,より快感情を低下させる実験手続きを開発することを目的とした。まず研究1では,妨害刺激嫌悪効果及び反応抑制刺激嫌悪効果の基礎研究及び応用研究をレビューし,これらの効果を食行動の変容手法として利用するために必要な条件を明らかにした。そして研究2では,上記のレビューの内容に基づき,反応抑制刺激嫌悪効果の生起における注意の役割を検討した。あるカテゴリの食物画像(グミ)が出た場合に反応を行い,別のカテゴリの食物画像(おかき)が出た場合に反応しないことを求め,その後に画像に対する印象評定(見た目の美味しさ)を行った。その結果,反応の抑制を求められた画像に対する美味しさ評定値は反応した画像に対する美味しさ評定値よりも低かった。しかし,画像の上に一桁の数字を提示し,数字が奇数であった場合は反応し,偶数であった場合は反応しない課題をおこなったところ,反応の有無は食物画像の美味しさ評定値に影響を与えなかった。これらの結果は,反応の抑制による快感情の低下が生じるためには,刺激に対して注意を向ける必要があることを示唆する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の達成目標は,より効果的に快感情を低下させる実験手続きを考案することであった。研究の結果,反応抑制による快感情の低下が生じるには,刺激に注意を向けることが重要であることを明らかにできたため,研究は概ね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,妨害刺激嫌悪効果及び反応抑制刺激嫌悪効果を食行動のコントロールに応用する研究に着手する。同時に平成26年度に引き続き,これらの効果を高める実験手続きの開発を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究開始時に予定していた実験用パソコンの購入が不要になったため残額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に残額生じた分については,実験補助員の雇用費及び実験参加者謝金として使用する予定である。
|