研究課題/領域番号 |
26870754
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
平井 健介 甲南大学, 経済学部, 准教授 (60439221)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経済史 / アジア / 中国 / 砂糖 |
研究実績の概要 |
本研究は,1930年代の中国における砂糖販売統制計画の立案から廃案までの過程を,自由貿易を求める中国内外の政治経済主体の動向に焦点を当てて考察し,当該期におけるアジア国際秩序の変容を解明しようとするものである。 平成26年度には,資料の調査収集に努めると共に,実証研究を進め,各学会・研究会で研究成果を積極的に発表した。資料の調査収集に関しては,国内の東京大学・東洋文庫・慶應義塾大学を中心とする各種図書館,台湾の台湾図書館・国立台湾大学図書館などで資料調査をおこなった。これらの資料の分析を通じて,1930年代の東アジア砂糖市場では各地で深刻な砂糖の供給過剰が発生しており,中国が過剰糖の処分先として有望視されざるを得ないという構造が明らかとなった。また,こうした市場動向を背景に中華民国政府によって立案された砂糖販売統制計画に対して,日本の政治経済主体(日本商社,糖業連合会,外務省)がどのように認識し,対応しようとしたのかをかなりの程度把握できた。その結果,1930年代のアジアは,ブロック経済化や国民経済化といった経済の領域化だけで把握されるべきでないことが,明らかとなりつつある。 以上の研究成果は,国内外の学会・研究会を通じて発信した。国外では韓国で開催された国際ワークショップにおいて “Trade Friction over Chinese Sugar Market in the 1930s” と題する発表(於ソウル大学)を,国内では社会経済史学会近畿部会において「1930年代中国の「経済的自立化」と台湾」と題する発表(於大阪大学)を通じて,多くのコメントを得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度の計画では,東アジア砂糖市場の構造と日本の政治経済主体の動向のみを把握することとなっていたが,その過程で平成27年度に実施する計画であった中国側の資料も一部入手できた。その結果,研究発表の場において,1930年代のアジア国際秩序について新たなイメージを提示することが可能となり,貴重なコメントをもらうことにつながった。 また,国際ワークショップでの報告を通じて,戦間期の政治経済史をテーマとする書籍に,本研究成果が論文として所収されることも決定した。本書籍は平成27年度に,日本のみならず台湾および韓国において,それぞれの言語で出版される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は順調に進んでいるが,今後は実証水準を高めることが課題となる。とりわけ,当初の平成27年度計画にあった中国における資料収集を実施する予定である。また,論文の所収も決定しているため,資料収集を通じて得られた新たな知見を加えながら,研究成果を論文としてまとめる。
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