本研究の目的は,1930年代の中国における砂糖専売計画の立案から廃案までの過程を考察し,当該期におけるアジア国際通商秩序の変容を解明することである。1930年代のアジア国際秩序の変化は,ブロック経済化や中国の国民経済化によって自由貿易体制が崩壊する過程として描かれてきた。本研究は,中国の政府が計画・実施した砂糖専売計画に対して,貿易プレーヤーがどのように反応するのかを考察することで,この問題に迫った。その結果,中国の国民経済化は,「密貿易」や「特殊貿易」の形成を招来することで,容易に自由貿易体制から離脱できなかったことを明らかにした。
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