本研究は、ドイツ法との比較研究を通じて、日本における私的扶養制度の展開を検討するものである。 ドイツでは、社会扶助が先行して給付され、その後扶養義務者への償還請求を行う仕組みをとりつつ、高齢社会を背景として基礎保障制度が整備され、老親の扶養義務者への償還請求は年収による制限が設けられ、部分的に私的扶養優先原則が後退する仕組みも整備している。このような法状況のなかでも強制可能な私的扶養が維持されているのは、私的扶養制度を維持することで当事者間での任意の扶養の履行につながり、それが「家族」の保護にもつながる可能性があるからである。 この観点は、今後日本における扶養制度の展開を考える指針となる。
|