研究課題/領域番号 |
26870756
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
伊藤 健顕 甲南大学, マネジメント創造学部, 講師 (00709496)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 定性情報 / MD&A |
研究実績の概要 |
本研究における今年度の目標は,有価証券報告書に記載される定性情報のデータベース化であった。有価証券報告書そのものは企業のホームページやその他データベースにより閲覧可能であるが,財務数値等の定量データ以外の部分をカバーしたデータベースは存在しない。プロネクサス社の提供するeolにより内容検索等は行うことができるが,定性情報の文字数や文章数については自身で情報収集を行う必要がある。本研究では有価証券報告書に記載される定性情報のなかでも「経営成績,財政状態およびキャッシュフローの分析(MD&A)」の部分について,現時点で2004年3月期から2014年12月期までの東証一部上場企業(全18,503サンプル)のデータベース化を行った。そしてこのデータを用い,MD&A情報のボイラープレート化を定量的に判断することを目的としたMeasuring Boilerplate Disclosure Level in MD&A in Japanese Firmsを執筆中である。現在の分析結果では,MD&Aが制度化された2004年3月期以降,金融危機のあった2009年度(2008年4月~2009年3月)についてはボイラープレート化する傾向がみられたが,それ以外の時期においてはボイラープレート化する傾向はみられなかった。また,ボイラープレート化の判断指標としているMD&Aの修正度の決定要因についても分析を行っているが,現在のところ積極的な業績予想を行う企業はMD&Aも積極的に修正をする傾向にあることが明らかになっている。また,MD&Aの文字数が多い企業は積極的には修正はせず,SEC基準を採用している企業は積極的に修正をする可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標であったデータベース構築はおおよそ予定通りである。ただし,現時点までに収集したデータに加えて東証マザーズやJASDAQといった新興市場のデータ収集も行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の目的通りデータベースの構築は順調に進んでいるため,今後はこのデータを用いた論文の発表を積極的に行っていく。2015年度においては国内では日本会計研究学会第74回年次大会の自由論第報告にて報告を行う予定である。また国外では8月にシカゴで開催されるAmerican Accounting AssociationのAnual Meetingにおいて現在執筆中のMeasuring Boilerplate Disclosure Level in MD&A in Japanese Firmsを報告予定である。それに加えて11月にオーストラリアで開催される27th Asian-Pacific Conference on International Accounting Issuesへも投稿予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費はノートPC購入のためであったが,想定していた金額よりも安価に取得することができたために差額が発生している。また,人件費に関しては実際の学生アルバイトの都合等で予定していた時間を消費することができなかったため,差額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費は分析に際して現在所有しているものよりもスペックが高いPCが必要であるため,その購入にあてる予定である。旅費は現在投稿中ではあるが海外学会への渡航費用とする予定である。またデータベース構築の作業もまだ行う必要があるため,その際には謝金・人件費を活用する。また,その他は学会への参加費用および英文の校正費用とする予定である。
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