研究実績の概要 |
通常インフルエンザワクチンに関しては、接種後の抗体検査など免疫学的評価を行うことはない。また多くの人はワクチン接種→抗体産生→感染防御と考えている。しかし、インフルエンザに関しては実際に抗体がどのくらい産生されれば、感染防御につながるかよく分かっていない。近年、インフルエンザに対する免疫学的評価としては細胞性免疫と液性免疫の両方を評価することが良いとの報告があり、細胞性免疫を適確に評価する方法を確立する必要があると考えた。申請者は、結核の検査方法として用いられているクオンティフェロンをヒントに、水痘・帯状疱疹ウイルスに対する細胞性免疫の評価に関する研究を行ってきた。本研究では、申請者が開発した水痘・帯状疱疹ウイルスに対する細胞性免疫を測定する方法と同様の方法を応用し、インフルエンザウイルスに対する細胞性免疫を測定する方法を開発する。本研究では、(a)インフルエンザウイルスに対する細胞性免疫の測定方法の開発、(b)インフルエンザワクチンの接種に伴う免疫学的効果、(c)インフルエンザに対する免疫学的評価方法の確立を目的としている。 平成26年度に行った内容 (a)インフルエンザウイルスの細胞性免疫の測定方法の開発を行った。方法は全血とインフルエンザ抗原3種(H1N1,H3N2,B)それぞれと反応させ、最も多く特異的T細胞からIFN-γが産生される抗原量や培養時間の設定を行った。(b).インフルエンザワクチンの接種に伴う免疫学的効果を調べるため、ワクチン接種前後で、継時的な採血を行っている。また、同時に血清を保存している。これらの血清を用いて、インフルエンザの抗体をHI法にて測定し、細胞性免疫との関連をみる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、具体的に次のテーマを設定している。(a)インフルエンザウイルスに対する細胞性免疫の測定方法を開発、(b)インフルエンザワクチンの接種に伴う免疫学的効果、(c)インフルエンザに対する免疫学的評価方法の確立 (a).我々が、水痘・帯状疱疹ウイルスに対する細胞性免疫を測定する方法を開発し(Otani N, et al. J Immunol Methods, 2009)、感染の有無や発症時の診断に有効に用いることが可能であることを証明した(Otani N, et al. J Immunol Methods,2012)方法を参考にし、抗原量や培養時間の条件設定を進めることができた。 (b).職員などに対して、本研究の説明を行い、予定の20名を超える参加者を得ることができた。次に、(a)にて確立した細胞性免疫測定方法を用い、ワクチン接種前、ワクチン後2週間、ワクチン接種後2か月と参加者から採血を行った。次にワクチン接種後6か月の採血を予定している。一部の患者でインフルエンザに感染された方がいたため、インフルエンザに感染した場合の採血プロトコールをあらかじめ設定する必要があった。これは、今後これらの結果を分析したうえで検討する。 本研究に必要な関連機器はすでに装備されており、本学の倫理審査委員会の承認を既に得ていたため研究はスムーズに開始することができた。尚、当大学では、インフルエンザワクチンを希望する職員に対してワクチン接種を行っておりその日程に合わせ採血を行っているため、ワクチン接種に係る費用などは発生していない。
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