本研究は、文化遺産のデジタルドキュメンテーションと、これを活かした景観考古学的な研究を推進するものである。 本研究における文化遺産のデジタルドキュメンテーションは、遺物・遺構・遺跡・遺跡周辺・遺跡が所在する地域の地形環境など、様々な空間スケールの資料を対象とするものであり、しかもそれらは三次元形状と色情報をもつ点に特徴がある。景観考古学研究法は、様々な空間スケールの資料を時空間情報を軸に統合し、過去の景観を仮想復元して、景観構成およびその変化と社会の関係を明らかにしようとするものである。また、本研究では文化遺産のデジタルドキュメンテーションに必要な知識と技術を、フィールド調査やワークショップを通じて関係機関や研究者に伝えるプロジェクトも進めている。 初年度の2014年度は、フィールド調査と資料の整理を中心におこない、成果の公開は学会や公開シンポジウムなどでの発表を通しておこなった。フィールド調査は、ウズベキスタン共和国、モンゴル国、日本などで実施した。 2年目の2015年度も引き続き、フィールド調査とデータの整理、および国内外での発表をおこなった。特に調査の点では、SfM-MVSなどを用いて遺物などの小型の文化遺産を低コストで三次元記録する手法の開発と実践を深化させた。またモンゴル国での調査成果の一部がUNESCOによる遺跡保存・保護のための基礎資料として利用されることになった点は大きい。 最終年度の2016年度は、フィールド調査とデータの整理を継続しつつ、景観考古学的な視点から調査データの分析を進めた。その成果は日本考古学協会や日本文化財科学会および海外で開催された国際シンポジウム等で発表したほか、これまでの研究成果はWAC(世界考古学会議)において、景観考古学研究に関する研究成果と、文化遺産のデジタルドキュメンテーションに関する教育について海外での取り組みを発表した。
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