研究課題/領域番号 |
26870772
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
渡辺 伸一 福山大学, 生命工学部, 准教授 (20450728)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バイオロギング / バイオテレメトリー / 食害 / 行動計測 / 加速度データロガー / 笠岡 / 瀬戸内海 / 沿岸生態 |
研究実績の概要 |
本研究では、最新の生物計測技術によって瀬戸内海沿岸域に生息するナルトビエイの行動を詳細に調べ、「季節的な移動回遊」、「沿岸部へ来遊時の行動パターン」、「二枚貝類等の捕食行動の実態」などを明らかにすることを目的としている。 当該年度では、ナルトビエイの(1)来遊状況および(2)捕獲および行動計測装置の装着と回収、(3)行動分類のためのデータ解析に関する手法の確立を目指した。 (1)2014年4月から10月までに計25回、笠岡湾の干潟を訪れ、ナルトビエイの来遊状況を調査した。来遊状況は、干潮時に干潟を訪れ、ナルトビエイによる食痕の有無を確認することでおおよその来遊履歴を知ることができた。また、夜間の満潮時に沿岸部でセンサスすることで、ナルトビエイの来遊を目視により観察した。その結果、ナルトビエイが7月から8月にかけての大潮の時期に特に多く笠岡湾内に出現することが明らかになった。 (2)出現頻度の高かった7月から8月の大潮の満潮時に、沿岸部でナルトビエイの捕獲を試みた。試行錯誤の末、マグロなどの大型魚用の釣り具をもとに製作した漁具により3個体の採集に成功した。採集したナルトビエイには背面部に超音波発信器とデータロガー(GPS+深度・温度記録計、加速度・深度・温度記録計)を装着して放流した。装着した追跡装置は、装着から12時間後または36時間後にエイから脱落して浮上するようにタイマーをセットした。追跡装置はすべて予定時刻にエイから脱落して浮上した。 (3)回収した加速度データから、ナルトビエイの行動を5パターン(上昇遊泳・下降遊泳・滑空遊泳・水平遊泳・底層休息)に分けることができた。その結果、ナルトビエイは、滑空遊泳と上昇遊泳の繰り返し昼夜を問わずほとんどの時間を移動し続けていた。ほとんどの時間を遊泳し続けたため、装着したGPSは常に水中にありGPSによる位置計測はできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた、つぎの3つの手法(1)来遊状況、(2)捕獲および行動計測装置の装着と回収、(3)行動分類のためのデータ解析の確立については順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)来遊状況の調査結果から、次年度以降も行動計測のための捕獲時期を出現の多い7月から8月に集中的に行うことを計画している。 初年度の調査により、(2)採集と計測装置の装着・回収手法については概ね確立することができた。次年度以降は、この手法をさらに改善し、ナルトビエイの行動計測のデータを効率よく取得することを目指す。 (3)データ解析については、さらに多くのデータを収集することでより、効率よい解析手法の開発を試みる。今後、データロガーを装着した個体を飼育下や野外で観察して、行動と加速度データとの比較を行い、行動分類の精度を高めたい。とくに、二枚貝類の摂餌行動については、記録が不十分であったため、二枚貝類の摂餌行動を記録するための調査・実験を行う予定である。 水中での位置計測については、GPSによる計測ができなかったため、今後は地磁気データロガーなどをもちいるなど他の手法の適用を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたよりも、早い時期に調査対象種が調査地から消失したため、捕獲を伴う野外調査を早い段階で中止した。そのため、予定していた物品購入費に残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度では、対象種が現れる7-8月に集中して調査を行うため、物品購入の時期を早めて行う計画である。
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