研究課題/領域番号 |
26870781
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
内田 琢 宮崎大学, 医学部, 助教 (60464137)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 新生児てんかん / 発達小児科学 / 電位依存性カリウムイオンチャネル / KCNQ2 / GABA作動性神経細 / ノックインマウス / パッチクランプ |
研究実績の概要 |
電位依存性カリウムチャネルサブユニットのひとつKV7.2(KCNQ2)をコードする遺伝子KCNQ2のミスセンス変異は良性家族性新生児けいれん(Benign Familial Neonatal Epilepsy; BFNE)および新生児てんかん性脳症7型(Early Infantile Neonatal encephalopathy type 7; EIEE7)を引き起こすことが知られている。これらの疾患は生後一週間以内に発病する特徴があり、遺伝氏変異型てんかんとして最も早い。一方で、神経伝達物質γ-アミノ酪酸(GABA)は成熟した脳では抑制性として働くが、新生児期の未熟な神経細胞では興奮性として働く。この興奮性は脳の発達にとって重要だが、過剰な興奮はてんかんの原因になりうる。また、発達期の脳内では神経ネットワークの構築が行われており、カリウムチャネルは神経同士のシナプス形成に重要な役割を果たしている可能性がある。KCNQ2遺伝子変異によって新生児期のGABA性神経ネットワークがどのように影響を受けるかを明らかにするために、BFNE、EIEE7患者に見つかったものと同様の遺伝子変異を持つノックインマウスを作成した。さらにこれらのマウスのGABA作動性神経細胞を生理学的条件下で同定するために、同神経細胞特異的にヴィーナス蛍光タンパクを発現するVGAT-Venusマウスと交配させた。これによりKcnq2遺伝子変異を持ち、GABA作動性神経細胞特異的に蛍光を発するモデルマウスの作成に成功した。このマウスを用いてKCNQ2遺伝子変異による新生児期のGABA性ネットワーク構築とKcnq2遺伝子変異の関連性を調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新所属先動物施設へのマウスの移送が完了し、交配に成功した。 昨年度における研究結果でKcnq2遺伝子変異マウスの海馬CA1領域錐体細胞におけるGABA性シナプス後電流の頻度が増加していることを明らかにし、また幼若期の同細胞においてGABAが興奮性であることを電気生理学的に示すことに成功したので、これらが「てんかん発作」に寄与しうるか確認した。Kcnq2遺伝子変異マウスの海馬急性脳スライスに対する細胞外電気記録を行い、CA1領域において無Mg2+および低Ca2+組成の人工脳脊髄液を使用することで「てんかん様発作」の誘導に成功した。さらにGABAA受容体アンタゴニストによる「てんかん様発作」の持続時間の短縮を確認した。同組成の人工脳脊髄液では野生型のマウスにおいててんかん様発作は見られなかった。 これまで得られた実験データの解析を行い、これらをまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
動物の交配を続け、個体数を維持する。 引き続き実験データの解析を行い、英語論文の作成、国際科学雑誌への投稿を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規研究環境を整えることに専念し学会活動を控えたため、学会参加費・旅費等を使用せず当初の使用計画と差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
電気生理実験機器、動物の飼育や実験に関連する消耗品等に用いる予定である。
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