研究課題/領域番号 |
26870786
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
藤川 拓朗 福岡大学, 工学部, 助教 (20609606)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 乾湿繰返し試験 / 耐久性 / 石炭灰 / 石炭灰混合材料 / 一軸圧縮試験 / 溶出試験 / 土壌環境基準 / 重金属 |
研究実績の概要 |
東日本大震災以降、火力発電所の稼働が増加していることや電力自由化の影響に伴い、石炭灰の発生量は、現状より増大していくことが見込まれるため、今後さらなる石炭灰の有効利用が求められている。その中で本研究は、石炭灰を用いた地盤材料(石炭灰混合材料)の耐久性と環境安全性を評価する手法を確立することを目的としている。最終目標に向け、当該年度は大別して3つの検討を行い、以下に示す成果を得た。 室内試験(乾湿繰返し試験)から実地盤の長期耐久性を予測・評価する手法の検討においては、昨年度に引き続き、石炭灰混合材料の強度増加と劣化に伴う強度低下を定量的に評価するための実験データの蓄積を行った。また、実地盤に打設した石炭灰混合材料の継続モニタリングを行い、重金属類の溶出と一軸圧縮強度の関係性についてデータの蓄積を行った。 石炭灰混合材料の長期的な環境影響評価の検討では、カラム通水試験をはじめ種々の溶出試験を実施した。当初の計画通り、土壌環境基準を超過する溶出濃度が見られたため、不溶化方法として石膏粉に着目し、適切な添加量と不溶化効果の検討行った。その結果、石膏を添加することにより石炭灰混合材料中のホウ素やフッ素については溶出抑制効果が認められた。ただし、六価クロムについては引き続き不溶化に向けた検討が必要である。 低強度石炭灰混合材料においては、昨年度の研究成果で更に細かい温度設定の検討が必要になったことから、本年度は更なる検討として、スレーキングを生じさせず劣化を促進させ耐久性評価が可能な乾燥時間について検討した。その結果、低強度石炭灰混合材料は、適切な乾燥時間を設定することで乾湿繰返し試験が可能であり、ASTMに準拠し乾燥温度60 ℃にて試験を実施する場合、乾燥温度は8時間とするのが良い。またその結果は、乾燥温度35℃で24時間乾燥させた乾湿繰返し試験結果と概ね一致することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の達成目標は、①室内試験(乾湿繰返し試験)から実地盤の長期耐久性を予測・評価する手法の検討、②石炭灰混合材料の長期的な環境影響評価の検討、③昨年の検討で課題となった、低強度な石炭灰混合材料のより詳細な条件設定の検討である。 ①については 強度増加をある程度予測できることを明らかにした。また実地盤においても昨年度に引き続きモニタリングを実施し、室内試験と実地盤の相互関係を明らかにするために必要なパラメータの長期的なデータを取得することができた。 ②については、石炭灰混合材料の長期的な環境影響評価を行うため環告46号法試験、タンクリーチング試験、有姿試験等、種々の溶出試験を実施し一連のデータを取得することが出来た。ただカラム試験に関しては、石炭灰中に含まれる重金属類の溶出濃度が高かったため、石膏粉を添加するなどの処理と検討が必要となったため、全ての実験条件を網羅することができなかった。この点に関しては、最終年度の前半までに終了させる予定である。 ③については、乾燥温度における含水比の低下を定量的に評価した上で その結果、低強度石炭灰混合材料においては、乾燥温度の設定が耐久性を評価する上で極めて重要であり、乾燥温度35℃において耐久性の評価が可能であることを明らかにした。さらに、ASTMに準拠し乾燥温度60 ℃にて試験を実施する場合、乾燥温度は8時間とするのが良いことを明らかとした。さらにその結果は、乾燥温度35℃で24時間乾燥させた乾湿繰返し試験結果と概ね一致することを明らかとした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度として、3年間にわたり蓄積したデータをもとに、室内試験から実地盤の長期的耐久性を予測・評価する手法(推定式の提案)の検討を行う。具体的には、“乾湿1 サイクル(あるいは15 サイクル)は、実地盤における何年分の強度や耐久性を担保できているのか”について、種々の条件設定から得られたデータ(初期強度、Ca の溶脱、拡散係数等の種々のパラメータ)を解析し、実地盤に施工してある石炭灰混合材料のモニタリング結果と比較を行い、実務性のある長期強度の推定式を提案する予定である。 また、昨年度の継続として、実際の利用場に応じた条件での溶出特性と長期的な環境影響についてカラム通水試験を用いて明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
外注にまわす予定であった溶出試験の検体数が1つ減ったことにより、分析費が当初の予定金額と比べて安くなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今回生じた繰越額については、28年度の分析費用に充てる計画である。
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