研究課題/領域番号 |
26870787
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
下戸 健 福岡工業大学, 情報工学部, 准教授 (40412457)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 医用ロボット / 医用システム / 再生医療 / スフェロイド / 細胞構造体 |
研究実績の概要 |
本研究では,再生医療用3次元細胞構造体を作製するための細胞凝集塊について,形状特性について解明することを目的としている.2014年度は細胞凝集塊形成システムの開発とプログラミングおよび細胞凝集塊の適切な細胞数の特定を行った. 細胞凝集塊形成システムの開発とプログラミングでは,スフェロイド培養するためのプレートやチップを使用できるようにハードの設計を行い,専門の技術技能員が行うモーションや作業時間を参考にモーションのプログラミングを行っている.次年度では,このシステムを用いて細胞凝集塊の作製を行っていく予定である. 細胞凝集塊の適切な細胞数の特定では,正常ウサギ間葉系幹細胞を対象に培養経験のない研究員と技術技能員が細胞培養およびスフェロイド培養して実験を行った.スフェロイドの培養を始めてからの日数,細胞数,細胞の継代数で比較するために,開発した細胞凝集塊形態評価システムを用いて,作製される細胞凝集塊の定量評価を行った.形状特性の重要な要素の1つは円形度である.再生医療用3次元構造体に使用していた細胞凝集塊の円形度は0.7以上だったため,その値を基準とした.細胞数が多すぎると円形度は低く,時間が経過しても円形度は変化しないことが認められた.細胞数が最適な範囲であれば,一定期間は円形度を増しながら小さくなっていくことが認められた.円形度が高い細胞凝集塊においても,細胞数によっては細胞凝集塊の直径にばらつきが生じることが明らかとなった.培養経験のない研究員と技術技能員ともに最適な細胞数の範囲は同様であったが,両者が作製した細胞凝集塊の大きさには差が生じていた.これは,技術的要因が関係していると推察され,システム開発におけるモーションのプログラミングの重要性が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は細胞凝集塊形成システムの開発とプログラミングおよび細胞凝集塊の適切な細胞数の特定を行うことを目的としていた. 細胞凝集塊形成システムの開発とプログラミングにおいて,予備実験の結果,細胞凝集塊が得られるプレートは唯一であったため,開発システムでも同じプレートが使用できるようにハードの設計を行い完成している.細胞混濁液中の細胞数を指定した値に調整してプレートに播種できるように,現在プログラムを調整している.さらに,専門の技術技能員のモーションを再現するような,モーションのプログラミングも行っている. 細胞凝集塊の適切な細胞数の特定では,細胞凝集塊を撮影するシステムが必要であった.顕微鏡を用いた撮影では,目的とするウェルの探索やピント調整等で時間が掛かるため,細胞にダメージやコンタミネーションの発生が懸念された.そこで,短時間でプレート全ての細胞凝集塊の撮影を行えるようなシステムを開発した.そのシステム内に細胞凝集塊を定量評価できるソフトウェアを組込み,解析できるようにした.正常ウサギ間葉系幹細胞を対象とした実験は完了し,データを蓄積することができた.
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今後の研究の推進方策 |
作製する細胞凝集塊の形状特性について解明するために,前年度に引き続き細胞凝集塊の適切な細胞数の特定と目的に応じた細胞凝集塊の作製が可能か解明していく. 細胞凝集塊の適切な細胞数の特定では,脂肪由来幹細胞についても実験を行い,肉眼的評価と定量的評価を踏まえながらデータベース化を引き続き進めていく. 目的に応じた細胞凝集塊の作製では,開発している細胞凝集塊形成システムを用いて,データベース化した条件で細胞凝集塊を作製し再現性の確認を行う.さらに,目的となる形状を有した細胞凝集塊を作製できるか確認を行っていく.現在,細胞凝集塊形成システムは研究室で開発を行っている.細胞凝集塊の作製時には細胞培養室に移動する予定であるが,コンタミネーションの発生や細胞へのダメージがないように,細胞凝集塊形成システムがクリーン性を維持しているか予備実験で十分に確認し研究を進める.手技による細胞培養においても,細胞の死滅を常に考慮し,予備の細胞を十分にストックしながら実験を進める.
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