平成28年度は、まず6月にカナダのモントリオールで行われた国際学会(Association of Critical Heritage Studies) の文化遺産がもたらす社会変容に関する考古遺跡の事例研究についての分科会において、27年度までの調査結果を基にした研究報告を行った。また、8月から9月初旬にかけてトルコでの現地調査を実施した。この現地調査では、地中海地方のアンタルヤに入った後、デムレ、パターラ・ゲレミシュ村、エルマルでの調査が中心となった。 アンタルヤでは、「リュキア古道」と呼ばれるトレッキングルートを開拓し、維持・管理しているNGO組織Culture Routes Societyにて聞き取りを行った。デムレでは「リュキアの道」トレッキングルートについては、トレッキングルートを近隣の村の地域開発に活用しようとする取り組みなどについて聞き取り調査を行った。パターラ・ゲレミシュ村では、1970年代まで続いた遊牧の生活や農業の導入による生活の変化について聞き取りを行った。ゲレミシュ村の成り立ちについて、またゲレミシュの人びとの遊牧生活の記憶を伝える活動について聞き取り調査を行った。後者については、実際にかれらの活動に同行し、山間部の都市エルマルで毎年9月初めに行われる、西地中海地域の遊牧民の祭を見学した。また、エルマルでもこの地域のイスラーム化以前の文化がいかに現在まで伝えられているか、特に遊牧の暮らしとの関わりを中心に聞き取りを行った。 10月以降は、集めてきた資料を見直しつつ、6月の国際学会で発表した報告の論文化を進めて、投稿まで完了させた。これはこの時の分科会で報告された報告から論文集をまとめあげる出版企画に応じたもので、2018年春にHISTORIA: QUESTOES & DEBATESに掲載予定である。
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