本研究の目的は、文化遺産に利害をもつ集団だけでなく、遺産とみなされる文化的所産そのものにも目を向けることで、考古遺跡の遺産化と観光開発の間で生まれている関係を明らかにすることである。具体的には、主にトルコ地中海地方の遺跡(パターラ、キビラ、ミュラ、ダスクィリオンなど)とその周辺に暮らす地域住民や観光産業、遺跡を発掘する考古学者の動きについての民族誌的な調査を行った。遺産をめぐる社会的関係は、遺跡から何が出土するかに左右される。特に、調査した事例の比較を通して、遺跡から出土したものの違いが、発掘や観光開発の進展や地元住民の遺跡に対する認識の差異を生んでいることが示された。
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