本研究は、ガンマ線に対して線量率が高い電子線照射による、食品中の脂質の変質の抑制について解析し、また電子線およびガンマ線による食品タンパク質の抗原性の低化を解析することを目的とした。2018年度は食品中のタンパク質の抗原性の低減化について研究を進めた。 卵白および牛乳を実験材料とし、室温、大気条件下においてガンマ線または電子線を照射した。ガンマ線は線量率3kGy/h、電子線照射はビームエネルギー10MeVにて照射した。Tris-HCl buffer、あるいはSDS・2-mercaptoethanol bufferによりタンパク質を抽出した。タンパク質抽出量を測定しELISAにより卵白のオボアルブミン、牛乳のカゼインおよびβ-ラクトグロブリンの抗原性を評価した。 卵白のTris-HCl bufferによるタンパク質抽出量は、SDS・2-mercaptoethanol抽出に対して固ゆで卵および放射線の高線量照射サンプルにおいて低下した。牛乳のTris-HCl bufferによるタンパク質抽出量はSDS・2-mercaptoethanol buffer抽出に対して低下し、処理法により変化はなかった。 ELISAによる固ゆで卵白のTris-HCl buffer抽出サンプルのオボアルブミン検出レベルは大きく低下し、オボアルブミンの加熱による抗原性の低下を反映していた。放射線照射した卵白Tris-HCl buffer抽出サンプルのオボアルブミン検出レベルは減少し、抗原性の低下がみられた。牛乳のカゼイン、およびβ-ラクトグロブリンは、高線量照射・Tris-HCl buffer抽出サンプルにおいて検出レベルが低下した。 以上より、卵白および牛乳のアレルゲンにおいて電子線およびガンマ線の中線量および高線量照射により抗原性が低下することが示唆された。
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