研究課題
本研究の目的は、観光産業の経済効果と波及効果を分析可能な、応用一般均衡分析（CGE）モデルを開発し、シミュレーション分析を行うことです。CGE分析は研究の蓄積が求められており本研究の学術的意義の一つです。本研究で作成したモデルは、日本全国47都道府県を対象とし、各県の地域経済と交通ネットワークから構成されています。地域間の観光や通勤による人の移動が組み込まれています。労働者でもある消費者は、効用最大化問題に基づき、日常財消費、各地の観光財消費、住宅消費、立地選択を行います。また、各地の地域経済は、地域内外の産業同士が連関しています。生産面では、費用最小化問題に基づき、中間財としての各地の財、労働力、土地、資本の投入量や財の生産量を決定します。最終財は消費者の日常財や観光財、生産者の中間投入物となります。主要な分析として、作成したモデルにより九州新幹線開通と今後の計画されている九州新幹線長崎ルートの開通による旅行時間短縮効果が、観光産業に及ぼす効果について分析しました。分析の結果では、新幹線が通る県と通らない県との間に不平等な経済効果が見られました。このような不平等な効果には、終着駅か中間駅、新幹線開通以前からの観光地かどうかも影響しました。波及効果を含め考えるならば、九州の全ての県において正の経済効果を得ることになりました。その他の分析として、九州新幹線の開通の住宅供給に及ぼす効果、経済成長と人口立地に及ぼす効果も分析いたしました。
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